みなみの強み ページ25
星野side
みなみには、強みがない。
自分で自覚していることを指摘されるほど、傷つくものはない。
図星だからこそ、余計に気にして引きずっていた。
誰にも言ってなかったけど、バナナマンさんの顔を見たら抑えられなくて。
隠しておこうと思っていた本音が、溢れて止まらなくなってしまった。
福神なんて場所、やっぱりみなみには勿体ない。
こんなにマイナスな気持ちになる選抜発表は、久しぶりだ。
「みなみ…！」
星野「…A」
「悩んでたの、気づかなくてごめんね」
星野「そんな…」
「私、みなみのこと友達だって思ってる。
だから、みなみのこと何でも分かってるって。
でも、全然そんなことなかった。
みなみにそんなこと言う人がいたなんて…
ごめんねみなみ、大丈夫…？」
星野「もう大丈夫だけど…」
「福神…？」
星野「みなみが福神なんて、やっぱり違うよ…」
「それは、強みがないから？」
星野「だって、何しても中途半端だし…」
「そんなことないよ」
星野「んーん、みなみの強みなんかないもん」
「そう思うなら、私が教えてあげる。
星野みなみの良い所と強み」
カメラが止まると、すぐに振り向いた顔があった。
眉を下げた心配顔。
でも、それは一瞬で。
ちょっと怒ったような表情をして、真っ直ぐにみなみの目を覗き込んだ。
「みなみはね、すごく優しいよ。
1人でいる子に、すって寄り添えるもん。
ひとりぼっちを作らない天才。
それは、周りをよく見てないと出来ないと思う。
そして、分け隔てないっていう感覚と勇気がないと出来ない。
全部揃ってる人、滅多にいないんだからね？
あと、バランス感覚がすごい良いよね。
頑張る所と抜く所を分かってるから、安心して見てられる。
自立してるって知ってるから、甘えても人は重たく感じない。
甘えられるって分かってるから、周りも気を遣わないでいられる。
人付き合いのバランス感覚は、もう生まれ持ってだと思う。
みなみ以上に楽に付き合える人、他にいないよ。
自然体でいられるって、本当に救われる。
だから、みなみはみなみで良いんだよ」
面と向かってこんなこと言われたのは、生まれてからAが初めて。
突然過ぎて流れそうになる言葉たちを、必死で受け止めた。
ゆっくり、自分の胸の中に落とし込む。
心がじんわりと温かくなっていくのが分かった。
こんなにみなみのことを信じてくれてる人がいるなんて、気づかなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年3月28日 18時
