夢の足跡 16

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『あんたはすぐ、お姉ちゃんのことを引き合いに出すけどね。

お姉ちゃんとあんたは、そもそも人間としての出来が全然違うんだよ。

親子と言えども、相性ってのがあるの。

ママはお姉ちゃんと相性が良かった、だから可愛く思える。

あんたのことは、もう可愛いって思えないと思うんだ、悪いけど。

親だから、義務として養育してあげてるだけ。

どれだけ比べたって、ママはお姉ちゃんの方が好きだよ。

それはもう仕方ないことだから、諦めなさい。

あんたも、親になれば分かるよ。

母性としての愛は注ぐけど、その深さに個人差はあるって。

人間としての好き嫌い、優劣はあるわよ。

私だって人間だし、ギブアンドテイクがある方が人間可愛いんだから。

ま、そもそもこんな仕事してたら、まともに恋愛も出来ないだろうからね。

きっと、結婚も子育てもしないだろうけど』




一撃は、あっという間に襲ってきた。

自分が闇の中に堕ちて行く。

底のない、真っ暗な場所へ。

薄れゆく意識の中、最後に一抹の望みをかけて手を伸ばした。

持てる力を全て振り絞って、最後の最後に藁にすがる。




「…私は、どうすればいい…っ？」


『そんなに辛そうな顔するなら、もう芸能界なんて辞めなさい。

さっさとアイドルなんて辞めて、地に足つけなさい。

あんたが必死で勉強して、医学部入ってお父さんの仕事を継いだら…

そしたら、本当にママの言ってること理解したんだなって思うけど。

ママ、ずっと昔から言ってたでしょ。

Aには期待してるから、お父さんの跡を継いで欲しいって。

それほど覚悟を決めたんなら、本気で変わりたいんだなって認めるけど。

人に憧れられて、感謝される職業の頂点が医者よ。

医者は、自分のためだけじゃやってけない。

人の命を預かるんだから、自分可愛いでしょなんて言ってる暇ない。

人様のために努力して認められる仕事は、アイドルだけじゃないわよ。

承認欲求だけで仕事してお金貰える職業とは、訳が違うんだから。

医者だって、なりたくてもなれない人はたくさんいる。

目指す価値はあると思うし、そんなに毛嫌いする職業でもないはずよ。

あんたのその、無駄に強いメンタルと意地は、医者に向いてるとも思う。

あなたの目指すべき理想が、承認欲求だけじゃないってことを証明しなさい』




これで、本当に救われるのなら…

この痛みから永遠に解放されるのなら…

私だって人間だ。

一筋の光を命綱にしてしまうのを許してほしい。

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