痛みと夢の天秤 ページ32
『Aっていつもそう。
何か都合が悪くなると、全部ママのせいにするよね。
ママの顔色見たからこうなった、ママが怒るからって。
すぐ未来を決めつけて、勝手に行動して。
挙句の果てに、ママが注意したらママのせい。
ほんっとに、見ててイライラするんだよ。
それで、無意識に人のことも傷つけてる。
あなたのせいで、周りの人みんなが不快な思いするんだからね。
ママだったから、この程度で許してもらえてるんだよ。
みんな、口には出さないけどあんたのこと嫌いだよ。
性格悪い、イライラする、目障りだって思ってるからね。
優しくて争いが嫌いな人たちの中にいるから、平和ボケしてるだけだよ。
あんたなんか、社会に出たら絶対に生きていけないからね。
女社会なら特に、あんたなんか真っ先にいじめの対象だからね』
さっきまで泣いてたのに、自分を悲観してたのに。
もう、目にはありありと怒りが宿っていた。
怒鳴られるような激しい炎じゃない。
ジリジリと、時間をかけて焦がされる火炙りのようだ。
『やっぱりそれは、普通の生活をしてないからじゃないかな。
お姉ちゃんみたいに、普通に学校行って、部活やってって。
そういう生活をして来なかったから、こんな歪んだんだよ。
学ぶべき時に、大切なことを学ばないから。
あんたがつまんない夢のために、普通の道を捨てちゃったから。
ママはそういうのも含めて、アイドルなんかダメだって反対したの』
「…はい」
『事実、あんた学校に友達いないでしょ？』
「そんなことな…」
『いたら、普通友達の話の一つや二つ、出てくるでしょ！
友達と放課後や休日に遊んだこともないし。
ママは、そういうことをAにして欲しかったの！
今のあんたなんか、全然魅力的でも何でもない！』
「ごめんなさい…」
『仕事は大人になれば、いくらだって出来るの。
嫌って言ったって、働かないといけないんだよ？
学生には、学生にしか出来ないことがある。
それをその時にやらなくて、時間は戻って来ないんだよ？
青春も友情も恋も、全部捨てて…
だから、人として当たり前の感情も全部なくなっちゃうんだよ。
そんなの、人じゃないよ。
ただのロボットだよ、あんたは。
そんな子、誰が好きって言ってくれるのさ…』
「うん…」
私はもはや、人間ではないのか。
それほどまでに堕ちきってしまったのか。
絶望の淵に立たされた。
次、一撃を喰らえばあっという間に闇の中だろう。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年3月18日 10時
