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『質問が多いから、全部は覚えきれなかったけど…
う〜ん…でも、単純にお姉ちゃんの方が可愛いからじゃない?
顔じゃなくて、性格がね。
なんか憎めないんだよね、あの愛嬌あって世渡り上手い感じ。
ぶつかっても、自分の意見をはっきり述べてくれた方が清々する。
だって、お姉ちゃんは1人で全部決めて、ママにぶつかったんだよ?
反対されることは分かってたけど、あの子は長女だから。
助けてくれる人がいなかったから、全部自分でやったの。
Aは、お姉ちゃんの力があってでしょ?
しかも、ママに隠れてコソコソと。
そういうとこが、可愛くないんだよね。
ママに怒られるから、内緒にしとこうとか。
自分で全部やれるほど覚悟が出来てないから、お姉ちゃんと協力してとか。
話せば、ママだって理解したかもしれない。
何にも相談なしだったから、腹が立ったんだよ。
1人じゃ怖くて何もできないくせに、逃げ方はずる賢くて逃げ足は早い。
下の子だから人の力を借りればいいっていう、その甘ったれた考え方が気に入らない。
それを指摘すれば、人のせいにして逆ギレですか?
Aが素直にならないから、ママも素直に応援できないの。
ママのせいじゃないよ、あんたが自分で蒔いた種だからね。
止めてよね、ママの名前を外で出すの。
これじゃあ、私がおかしい母親だと思われちゃうでしょ?
おかしいのは、そんな歪んだ人間に育ったあんただけだから』
「…」
随分と直球だった。
何にも言い返せない。
やったことは事実だし、背景にある感情も概ね当たっている。
どうせ、話してもママは理解してくれないのだけど。
ママの中では、話さなかった私が悪でしかないのだ。
何を言っても無駄だ。
「言えなかったの…アイドルになりたいって」
『なんで言えないのさ、自分の夢でしょ?
あんたは、自分の夢ですら口にできないの?』
「ママは、女の子が女の子を応援するのは普通じゃないって…」
『ほら、何でもママのせい。
普通じゃないなら、あなたは止めるの?
ママがやれって言ったことだけやって、好きになれって言ったものを好きになるの?
それじゃあ、ロボットと同じでしょうが。
そういうとこが嫌いだって、何回言えば分かる?
なんで頭は良いのに、そんな簡単なことが分からないの?』
それでも、私はダメ押しをしてしまう。
傷つくと分かっていながら。
だって、ママから無償の愛が欲しいから。
それだけなのに、届かない。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年3月18日 10時