歪みは叫んで吐き出して ページ3
「気持ち悪い…」
『今日、行くの止めとく？』
「でも、話したい…」
『そうだよね、話聞いて欲しいよね』
「昨日も今日も、倒れて保健室行っちゃったし…
最近、ずっと体調悪いんだもん」
『吐いてはない？』
「うん、それは大丈夫だけど…ごめんなさい…」
『んーん、話してくれてありがとうね。
カウンセリングの先生には、自分で言える？』
「うん…」
『言いたくなかったら、無理せんでもええからね』
「ママは…？」
『お母さんにも、来るよう勧めてるんだけどね。
やっぱり抵抗があるみたいで。
まいやんからも、お願いされてるんよ。
絶対にお母さんもカウンセリングに連れて行ってって。
でもほら、本人の意思がないとね…
やってても意味ないと思うからさ…』
「うん、そうだよね…」
今日は、数週間ぶりのカウンセリング。
前に来たのは、ツアーが始まる前だったからかなり間隔が空いた。
映画の公開からずっと、家では不協和音が鳴りっぱなしで。
ママは毎日機嫌が悪いし、ことある事に嫌味を言われる。
お前が悪いと、ずっと責められてるようだ。
だから、とにかく体調が悪かった。
:
『Aちゃん、久しぶりだね』
「お久しぶりです」
『どうでしたか、ちょっと空いちゃったけど』
「今はすごい、体調悪くて…」
『そっかそっか、どんな感じで体調悪いかな？』
「昨日はお腹痛くて、今日は気持ち悪いです…
頭痛い日もあるし、あと過呼吸になっちゃう…」
『そうかぁ…どんな時に苦しくなっちゃう？』
「ママにわーって怒られた時とか、言われたことを思い出しちゃった時…」
『どんなこと言われちゃうのかな？』
「それは……えっと…っ」
『うん、ゆっくりでいいよ。
あ、ご飯はどう？食べられてるかな？』
「う〜ん…」
『食べることに対する感情はどうかな？』
「あんまり…食べたくないです」
『どうしてかな？』
「食べても気持ち悪くなっちゃうし…
全然体重も増えないし、体調悪いし。
良くなってる気配ないから、食べたくない…」
『まだ、痩せてたい？』
「それはもちろん…アイドルだし。
太っても痩せても、ママは私が嫌い。
絶対認めてくれないことは分かってる。
だったら、痩せてた方がアイドルとしての価値はあると思う」
いつも、私の話は一辺倒だ。
それでも、聞いて欲しかった。
遠慮せずに逃げ込める場所が欲しかった。
でも、本音を崩すことは未だに怖かった。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年3月18日 10時
