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橋本「お母さん、うちに来てから連絡してきた？」
「ううん…」
橋本「Aから連絡は？」
「してない…」
橋本「どうしてしなかったの？」
「ママ、絶対に怒ってるから…」
橋本「そうでしょ？
それがおかしいんだよ、世間からすれば。
子供が本当に大切なら、連絡くらいするよ。
正しい愛を注ぐなら、まず怒りより心配だよ。
そもそも、正しい愛ならAは傷つかない」
「うん…」
橋本「ずっと辛かったでしょ、2人で暮らすの。
お姉ちゃんが進路を変えてからずーっと」
「辛かった…」
橋本「よく逃げたね」
「えっ…」
橋本「10歳は、まだ子供。
逃げたらどうなるか、全く考えなかったわけじゃないはずだよ。
でも、Aは自分で逃げる道を選んだ。
乃木坂に入ることで、自分の道を自分で選んだ。
小学生ができる事じゃないよ。
夢を叶えるために、勇気を出して踏み出せる。
お姉ちゃんが背中を押してくれたにしろ、すごいことなんだよ。
それからずーっと、頑張って来たんだね」
「ななみん…」
橋本「ママの応援が、表面上のものだって気づいていながら。
結果を残さないと怒られるって知りながら。
ママの言う通りにしないと傷つくって分かっていながら。
ずーっと頑張って、走り続けて来たんだもん。
結果も残して、みんなとも上手くやって。
こんな良い子、なかなかいないよ」
いや、身構える必要なんてなかった。
話していない秘密を話したとしても、それが常軌を逸していても。
人に言うのが躊躇われることでも、人前で辛いって声を上げても。
今までと変わらず、当たり前の関係を続けてくれる人はいた。
同じ視線、同じ態度、同じ温もりを与えてくれる人はいた。
なんだ、私の思い過ごしか。
人に言い難いことでも、ちゃんと辛いって助けを求めていいんだ。
「ありがと…ありがとななみんっ」
橋本「勇気、出してくれてありがとね」
「うん…っ」
橋本「あの時のAが頑張ってくれたから…
ううん、もっと幼いAがぐっと堪えてくれたから。
自分で変わりたいって願ってくれたから…
だから私は、こうしてAと会えたの」
「ななみんがいてくれて…ななみんと出逢えて本当に良かったっ…」
目の前にあるのが、悪夢のような毎日だったとしても。
それは、期間限定のもので。
いつどのタイミングでも、変われる勇気を持っておく。
そうすれば、奇跡の巡り合わせで必ず救われる日が来るから。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年3月18日 10時
