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みんな、おかしいって思ってるのかな。
もっと食べろ、たくさん食べなって言ってくる。
玲奈さんも、痩せすぎって言ってたし。
でも、どうにも分からなかった。
痩せてるとは思うけど、別に病気じゃない。
痩せすぎなんて実感、全くない。
ママは何にも言わないから。
ずっとそう思って来たけど、最近はちょっと違和感もある。
それは…
『A、お弁当は?』
「あ、うーん…なんか食欲なくて」
『大丈夫?体調悪い?』
「ううん、そういうんじゃないけど…」
『でも最近、全然お昼食べないよね?』
「ダイエットしてたらさ、なんか胃が小さくなっちゃって。
あんまり食べられなくなっちゃったんだよね。
どうせ食べても太るだけだし、別にいっかなって思って」
『いやいや、やばいよそれ。
A、今かなーり痩せてるからね』
「…そうなの?」
『え、自覚してないパターン?』
太りたくないという気持ちが、明確にあること。
ダイエットのつもりだったけど、いつの間にか体が馴れてしまって。
食べなければ痩せる。
食べれば太る。
だったら、食べない方がいい。
そういう価値観になりつつあること。
これはまずい。
頭では分かってるのに、止められなかった。
「失礼します…」
『ごめんね、お昼休み中に』
「いえいえ、どうしました?」
『うん、ちょっと聞きたいことがあって』
「はい…」
『白橋さんさ、最近お弁当抜いてるって報告が来てるんだけど本当?』
「あぁ…まぁ」
『食欲ないかな?』
「それもある時はあるんですけど…
そもそも、食べるの怖くて。
だって、太るじゃないですか。
そしたら私、商品価値なくなっちゃうし…
痩せてないと、自分に自信持てないから。
怠けてる自分が映るの、嫌なんです」
『う〜ん…』
「…おかしい、ですよね?」
『おかしいと一概に言うことはしないけど…
このままだと、危険ではあるかな。
今はどのくらい食べてるの?』
「えっと…う〜ん」
『今朝は何食べた?』
「今朝は…」
『朝ごはん、食べてない?』
「…はい」
『昨晩は?』
「昨晩…なんだろう」
思い出せなかった。
母親に管理されなくなったから、食事だけは自由。
だから、自分をコントロールする。
ママが褒めてくれる私になるために。
ママに、アイドルやってて良かったねって認めてもらえるように。
空っぽな心を愛で満たすために、まずは分かりやすい見た目を磨くんだ。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月23日 17時