一歩外は、敵だらけ ページ41
私の学校は、基本的に芯が強い子が多い。
人には干渉しない。
噂も鵜呑みにしない。
品格あるリーダーを育成してるだけあって、その通りの校風だと思う。
だから、私が仕事で休んでも、どんな仕事をしてても…
同級生が、あれこれ探ってくることはなかった。
それを前提にしても…
今回の騒動は、さすがに学校でも噂になっていた。
『あの…』
「はい…?」
『乃木坂46の白橋さんですよね?』
「そうですけど…」
『あの記事って、本当なんですか?』
「いや…」
『アイドルって、みんな裏ではあんなことしてるんですか?』
「違いますよ!」
『私、乃木坂のこと応援してたんです。
可愛いな、憧れだなって。
けど、あれ見てちょっとショックだったっていうか…』
「それは…ごめんなさい」
こうやって、直接疑問をぶつけて来る子もいる。
意地悪ではない。
悪意はないけど、興味はあるのだ。
周りの視線が、全部敵に見える。
学校を歩くのが怖かった。
「おはよ…」
『…あ、おはよ〜』
「ねぇ…」
『あ、ごめん、先生に呼ばれてるんだった』
「え…」
『ごめん、また後でね!』
教室に入っても、それは変わらない。
クラスメイトが、ヒソヒソと…
私のことなのか、そうではないことなのか。
分からないけど、怖かった。
あからさまに避けてくる子もいる。
あんまり、特定の仲良しは作っていなかったけれど…
何となく、クラスメイトから距離を置かれた。
これは空気感で分かった。
一刻も早く、ここから逃げ出したかった。
『清楚だと思ってたのにね〜』
『それな、やってること結構ゲスいよね笑』
『パパ活もどきみたいなもんだもんね』
『いや、パパ活以上でしょ笑』
『不倫って最悪だよね…』
『犯罪だもん』
『Aちゃんは、関わってないといいんだけど…』
『でも、スキャンダルはグループの問題だからねぇ』
『うん、特にAちゃんは人気メンバーだしね』
『今日も学校来てたけど、さすがの強さだよね』
『あれくらいメンタル強くないと、アイドル出来ないんだろうなぁ』
『私だったら、怖くて外出られないもん』
『うちも無理だなー』
私だって、出来るなら出たくないよ。
でも、そういうわけにはいかないじゃん。
息が止まりそうになった。
直接耳にした、生々しい言葉。
私の心には、新たな生傷が刻まれた。
悪意の塊ではないからこそ、刃は余計に深い所に入り込んできた。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月18日 10時