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繋いだ手、離れた手 ページ4

松村side


またや…

ちょっと前に感じたモヤモヤは、確実に燻っていた。

3人で一緒。

御三家と呼ばれていたはずなのに。

気づけば、前を行く2人とは随分と差が出来ていた。

いつの間にか、2人と1人。

置いていかれた坂は、とても急だった。

前を行く2人の背中は、目線のずっと先で。

小さくなったそれを、私は下から眺めていた。




「さゆりん…?」


松村「A…」


「楽屋、入らないの?」


松村「うん…」


「どうかした?」


松村「…ちょっといい?」




最近のAは、一匹狼の風格があった。

前までは、まいやんとかななみんとか、みなみとか。

特に仲が良いメンバーがいて。

私もその中の1人だと、勝手に思っていて。

けれど、神宮が終わってからあんまり一緒にいない。

メンバー全員と、ちょっとずつ壁を作っているように見えた。

だからなのかな。

今のAになら話せるような気がした。




松村「うちさ…なんで乃木坂におるんやろ」


「えっ…」


松村「なんで、うちが御三家なんやろ」


「それは…」


松村「ビジュアル?」


「…も、あると思うし。

やっぱり、スタイルも良いし。

バラエティとか、モデルとか。

乃木坂の顔、みたいな感じだからじゃない?」


松村「うちは違う」


「そんなこと…」


松村「あるよ、うちは2人とは全然違う。

だってそうやろ?

実際、2人は今回もフロントやんか。

下がるのはいつもうちばっかり。

8枚目もそう。

うちだけ、フロントから外された。

今回は福神やけど、それは人数調整やろ。

なーちゃんが2列目で。

そこを福神から落とせないから、2列目全部福神にした。

だから、これはうちの力やない」


「さゆりん…」




慰めとか、アドバイスとか要らなかった。

そんな事ないよ待ちでもない。

ずるいけど、酷いけど。

うちのバラバラなネガティブを、ただ受け止めて欲しかった。




「そっか…確かに、言われてみればそうだ。

いっつも、落とされるのはさゆりんだね。

でも、私には理由が分からないよ。

さゆりんはそうは思わないかもだけど。

慰めでもないし、同情でもない。

本心から、私はそう思わないって言ってる。

だから、それだけは忘れないでね」


松村「A…」


「ごめん…私、先行くね」




曖昧な表情をして、Aは去って行った。

なんだろう、この虚しさ。

すごく心に染みてるのに、なぜか自分に絶望してしまう。

自分が、どこかに堕ちていくのを感じた。

あなたは朽ちて堕ちていく→←・



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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月18日 10時

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