夢の足跡 12

私が手を離したんだ ページ23

「あの…」


『あ、A』


生駒「さゆりんって…」


『生駒も…やっぱりか。

2人は、追いかけて来ると思ってた。

松村なら、隣の部屋で休んでるよ。

やっぱり、相当精神的にも疲弊してるから』


「大丈夫なんですか？」


『過呼吸っぽかったけど、今ちょっと落ち着いた』


生駒「会いに行っちゃダメですか？」


『まだ、会って話せる状態じゃないと思う。

松村の気持ち的にも、今はメンバーには会いたくないと思うし。

ちょっとだけ、そっとしといてあげて』




明らかな怒りの温度、すすり泣く声。

感情が飛び交う空気に耐えられなくて。

そして何より、彼女の背中があまりに弱々しくて。

このままだと、もう触れられない。

そう察知して飛び出してきたら、先約がいた。

やっぱり、彼女は本物のヒーローだ。

たとえ、道を間違ってしまった人がいたとしても、見捨てない。

真っ先に寄り添えるんだから、絶対敵わない。




「単刀直入に聞きますけど、さゆりんは辞めちゃうんですか？」


『んー、本人はそのつもりでいるみたい』


生駒「やっぱり…」


「それは責任を取るってことなんですか…？」


『まぁ、そもそもグレーゾーンなんだよね。

責任も何も、松村に100非があったのかって聞かれたらそうじゃない。

事情は聞いたけど、意図的でも故意でもない。

事故に近い形なのに、卒業っていうのは飛躍しすぎだと考えてる。

今は、松村が冷静に話し合える状態じゃないから進めないんだけど。

我々としても、卒業って処分は考えてないよ。

2人は、記事は読んだの？』


「読んだけど、ちょっと納得出来ませんでした。

こっち側が不利になるように、話が曲解されてるようで。

私、悪いですけどAKBさんでも経験してるんです。

こういった類のスキャンダル。

いつも、女性側に落ち度がある書き方をされていて。

それで、結局責任を取らされるのはこっちで。

なんか…納得いかなくて」


生駒「さゆりん本人も、事実と違う所があるって言ってたし。

そもそも、妻子持ちを隠して話しかけてるって…

出版社の方なのに、さゆりんが乃木坂だって知らないって。

そんなこと、ありえなくないですか？」


『…うん、まぁ分かったから。

とりあえず、2人とも落ち着いて』




記事を読んだ。

否でいうと、6:4くらいだと思う。

いや、情状酌量で7:3か。

どう考えても、向こうの方が悪質だ。

何もかも、最初から分かっててやってた。

そうとしか捉えられなかった。

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