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「ただいまー」
『あれ、今日なんか早くない？
収録じゃなかったっけ？』
「なんかね、延期になったんだ。
トラブル発生しちゃったみたいで」
『あら、そうなの。
ならちょうどよかった。
これからさ、ママとお買い物行かない？』
「えぇ…」
『嫌なの？』
「嫌ってわけじゃないけどさ。
せっかくのオフだし、ゆっくりしたいなぁって」
『えぇ、でもAの休み待ってたら、どこにも行けないじゃん。
もうすぐ夏になるし、握手会のお洋服新しいの買おうよ〜』
「んー、私はいいかな。
ママ、欲しいのあるなら買ってきていいよ」
『はぁ…なんでいつもそうなの？
なんでいっつも、自分の都合ばっか…』
「いや、そんなつもりは…」
『ほんっと…自分勝手なんだから』
何の逆鱗に触れたのかも分からなかった。
重い体を引きずって家に帰って。
ほぼサボりみたいな言い訳を言えるはずもなく、嘘ついて。
一刻でも早く寝たいのに、買い物に誘われて。
やんわりと断ったら、いきなりキレられる。
意味が分からない。
いつもは抑えられるけど、今日は精神的に耐えられなかった。
「疲れてるんだから仕方ないでしょ」
『なに、それ。
疲れてるって、そんなのはあんただけじゃないんだよ？
ママだって疲れてるの。
いつも、あんたの代わりに家事やってあげてさ。
あんたが不自由なく生活出来てるのは、ママがいるからなんだからね。
ママがいなかったらあんた、生活出来るの？
出来ないでしょ？
それなのに何なの。
自分だけ偉そうに、疲れてるなんて。
なんかすごい人にでもなったつもり？』
「そういうことは言ってないでしょ。
ただ、仕事漬けで疲れてるから。
今日は休みたいっていうだけの話。
ママには感謝してるよ」
『どうだかねぇ。
総選挙で10位になったからって、調子乗ってるんじゃないの？
ポジションも上がって、優子さんとのユニットももらって。
ちょっと良い気になりすぎてるんじゃないの？』
「そんなこと…」
『総選挙なんて、勝って当たり前なんだからね。
だって、優子さんいないんだよ。
板野さんも、篠田さんも。
あんたより上の人、みんな卒業してるんだから。
そんなの、勝って当然でしょ。
生駒ちゃんに勝つなんて、そんなの当たり前』
「なんでさ…」
『なに、ママ間違ったこと言ってる？言ってないでしょ！』
もうダメだ。
このままここにいても、埒が明かない。
今日は黙って撤収しよう。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年2月11日 23時
