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『白橋さんの仰る通りです。
彼女達には、まだまだ未熟な部分がたくさんあります。
その辺は、我々が逐一指導していきますので…』
『本当にお願いしますね。
私は、乃木坂のためを思って言ってるんです。
それは遠回しに、娘のためでもありますけど。
私も、娘にキツく言って聞かせます。
もっと自分から、2期生に厳しく指導しなさいと。
なので、事務所の方もよろしくお願いしますね』
『かしこまりました』
「…すみません」
『ごめんな、Aにばっかり嫌な役回りさせて』
「いえ…」
『大丈夫です、うちの子も悪いですから。
まだ気持ち的にもど素人の子と、無駄に仲良くなろうとするから。
そういうのは、礼儀が出来てからにしなさい。
仲良くするのと馴れ合いは違うんだからね。
再三言ってるのに、いつになったら理解するの!』
「はい…」
親しき仲にも礼儀あり。
母親の言いたいことはこれだ。
随分と脱線したけれど。
言いたいことは分かるけど…
どうにもやり方が気に入らなかった。
:
「先程は、うちの母親が大変失礼しました…
何にも知らないのに、本当にすみません…っ」
『いや、Aが気にすることじゃないよ。
実際、お母さんの言ってることは間違ってないわけだし』
「それでも…あの態度は酷すぎます」
『挨拶は確かに基本だからね。
お母さん以外のスタッフにも、指摘されたことあるんだ。
ただ、我々が逐一の指導を怠っていた。
お母さんが怒るのも当然だと思う』
すぐ、運営の方に謝りに行った。
こんなの…黙って見ていられない。
私が謝るのもおかしな話だけど、そうでもしなきゃ落ち着かない。
運営の方は私の意に反して、お母さんの肩を持っていたから困惑した。
『確かに、乃木坂は良くも悪くも仲が良すぎる。
白橋が兼任してだいぶ経つけど、みんな慣れちゃったから。
適応が段々と馴れ合いに変わって来てるのかもしれない』
「そうだとしても…」
『いいんだよ、白橋は気にしなくて。
むしろ、いつも巻き込んでしまってごめんね。
白橋だけが悪者にならないように、我々も考えるからさ』
「いや、別に私はそんな…」
『ま、今日は疲れただろうからゆっくり休んで、ね?』
「はい…すみませんでした」
どうにもこうにも、納得できない。
心の奥に燻った炎は、真っ黒焦げになっていた。
不完全燃焼な気持ち。
私は、このやり場のない感情をどこに向けたら良いと言うのだろう。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月2日 11時