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橋本side
とにかく、早く会わなければと思っていた。
声を聞くだけじゃ分からない。
だって、彼女は絶対大丈夫のように振る舞うから。
会って抱きしめなければ、本当の気持ちは伝わらない。
だから、年明け早々、さほど離れていない家まで走った。
「…ななみん！？」
橋本「A…っ！」
「え…1人で来たの？」
橋本「家近いから」
「もぉ、新年早々、事件にでも巻き込まれたらどうするつもりだったの！」
橋本「Aこそ、新年早々、泣いて過ごすつもりだったわけ？」
「それは…」
橋本「無理しない。
私、そのために来たんだからね」
「ななみん…っ」
橋本「…頑張ったね」
目が真っ赤だった。
寝不足、そして泣いた後の充血。
自慢の二重が、今日は元気がない。
やっぱり、来てよかった。
母親も寝静まってるこの家で、彼女はひとりぼっちだった。
きっと、眠れないに違いない。
「ごめんね、来てくれてありがとう」
橋本「知らなかったんだ？」
「うん…言えなかったって。
私が悲しむ顔、見たくなかったって…
そんなこと言われたら、何も言えなかった…っ」
橋本「それだけ、Aのことが大切だったんだろうね。
どれだけショックを受けるか分かってるから。
だから、言えなかったんだと思うよ。
少しでも遅くなれば、その分悲しむ時間も減る。
優子さんは、Aに笑ってて欲しかったんだろうね」
「…うん」
橋本「…ちょっと分かるな、その気持ち」
「え、ななみん…」
橋本「あぁ、私は卒業しないよ？
でも、もしもの話。
もし、私が卒業するってなったら…
大切な人には、事前に言うかすごく悩むと思う。
自分のせいで傷つけたくないって思っちゃうかな」
「それは、私が弱いから？」
橋本「んーん、むしろ逆。
強いからだよ、強くなれるから。
絶対、もっと頑張っちゃうもん。
相手を思いやる気持ちゆえだね」
「そっか…」
橋本「今はまだ、受け入れられなくて当然だよ。
ゆっくり時間をかけてね。
卒業する日に、笑顔でおめでとうございますって言ってあげようね」
「うん…！」
橋本「そしたら、ちょっと寝な？
私、ここにいるから。
疲れてるんだし、少し休んだ方がいいよ」
先輩と後輩。
推しメンとファン。
特別だから、言えなかった。
それを人は、思いやりと呼ぶのだろう。
分かってるからこそ、苦しいんだよね。
もう少し、優しさを落とし込むには時間が必要だね。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年2月2日 11時
