検索窓
今日:17 hit、昨日:11 hit、合計:53,445 hit

ページ22

胸騒ぎがした。

リハの段階で、それは感じた。

優子さんの様子が、明らかにいつもと違う。

けれど、何も言うことが出来なかった。

そんな暇すらなかった。

バタバタと動き回る舞台裏。

時間のない、本番までのスケジュール。

だから私も、いつの間にか胸騒ぎなんて忘れていた。

まして、ちょっと前に感じた違和感なんて。

今年ももうすぐ終わる。

来年は、どんな年になるだろうか。

なんて呑気な気持ちでいた自分を、私は後に呪うこととなる。




:




私の初の総選挙選抜である、恋するフォーチュンクッキー。

社会現象にもなってダンスを、会場全体で踊りきった。

この日のために作られた衣装を着て。

いっぱい銀テープが舞って。

あぁ、夢みたいだなぁなんて。




大島「ありがとうございました〜

恋するフォーチュンクッキーを聞いて頂きました〜」




そして、次の曲はヘビーローテーション。

まさか、この曲をこのポジションで歌う日が来るなんて…

私は、前田さんの位置を任されていた。

斜め前に優子さんがいる。

大切に大切に、その時間を噛み締めよう。

そんな刹那、事件は起こった。








大島「えぇ、私事ではありますが…

ここで少しお時間を頂いて、お話させて下さい。

私、大島優子は、AKB48を卒業します」








心臓が撃ち抜かれたかと思う程の衝撃だった。

卒業…?

優子さんが?

AKBからいなくなっちゃう?

訳が分からなかった。






大島「少し前から話し合っていて、色々と調整をしていました。

そして、今日発表しようという運びになり、させて頂きました。

紅白歌合戦という場をお借りして申し訳ございません。

お時間を割いて頂き、ありがとうございました。

そして、2013年もAKB48の応援をありがとうございました。

来たる2014年も、48グループの応援をよろしくお願いします。

さてここからはね、みんな笑顔で行きましょう!

年内最後の歌番組なので、ぜひ盛り上がって下さい!

それでは聞いて下さい、ヘビーローテーション!」




大好きなドラム音。

歯切れの良い掛け声。

全部、全部憧れで、大好きで堪らないのに…




「…っ」




今はただ、涙が止まらなかった。

泣くつもりはなかった。

涙を止めろと、頭では命令していた。

でも、止まることを知らなくて。

とめどなく溢れてきて。

為す術なく、私はただ踊っていた。

斜め前の大好きな背中を直視出来ない。

2013年最後にして、今年1番の涙で溺れていた。

・→←君を残して旅立つこと



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
156人がお気に入り
設定タグ:乃木坂46 , AKB48 , アイドル
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月2日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。