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その2文字が言えなくて ページ17

大島side


今日のAの状態を見て、卒業を報告する。

そう周囲に伝えていた。

ただ、たかみなから事情を聞いた。

Aが不安定になってるって。

家で色々あって、心の状態が体にも影響してるって。

その原因は、やっぱり根深く繊細な所にあって。

それこそ、私なんかが軽々しく踏み入れちゃいけないくらい。

言うって決めてたのに、揺らいでしまった。

目の前のAは、淡い表情をしている。

優子さん家にお泊まりって、尻尾が見えそうなくらい喜んでいた時も。

美味しい美味しいって、私の晩御飯を口いっぱいに頬張っていた時も。

どこか、違う場所をその瞳は見ていて。

自分のことを話す時には、もう完全にここにはいなかった。

瞬きしたら、フッといなくなってしまいそうだ。

…やっぱり、言えない。




「頑張れば褒めてくれるし、ずっと怒られるわけじゃないんです。

すごく優しい時もある。

同じことしても、笑って許してくれる時もある。

ちょっと頑張れば、上手く付き合えるはずなんです。

まだ私が子供だから…

そのさじ加減を理解していないから…

私が未熟で不完全な子供だから、ママは厳しく干渉するんです。

もっと大人になれば、きっと普通の親子みたいになれると思うんです」


大島「A…」


「いつもいつも、迷惑かけてごめんなさい。

早くこの状態を抜け出して、強くなれば良いのに。

いちいち気にしないで、嫌なら反抗すれば良いだけなのに。

そうする勇気もなくて、中途半端に足踏みしてごめんなさい…」


大島「全然、迷惑とか思ってないからね。

子供にとって、母親は絶対的な存在なのは理解してる。

私だってそうだったからさ。

だから、Aがおかしいわけじゃないよ」


「優子さん…」




お母さんとお父さんが離婚して、お父さんと暮らしていた。

お父さんが嫌いなわけじゃない。

ううん、むしろ大好き。

それでも、無性に母親に会いたくなる時はあった。

お母さんの温もり、お母さんの愛情。

世界に一つだけの、特別な存在。

ただそれを求める時もあった。

だから、Aの気持ちは理解出来る。

彼女は1人でこっちに来てるわけだし、お父さんの話も聞いたことはない。

そんな中で頼れる大人は、母親だけだ。

そしたら、その愛情を壊さないように慎重になるのは当然だ。

母親にだけは、味方でいてほしい。

怒らせたくない、嫌いになってほしくない。

本能でそう願ってしまうのが、子供っていう生き物だろう。

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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年2月2日 11時

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