心に燻る残り火 ページ10
生田「あれー、Aご飯食べないのー？」
「うん、お弁当あるから」
生田「すごーい！手作り？」
「ママのね」
生田「お母さんすごいね〜」
「学校に持って行ってるから、その延長でね」
松村「そっか、給食ないのか」
「どうせなら、栄養バランス取れてた方がいいでしょって」
松村「えー！見たーい！」
「そんな大層なもの入ってないよ？」
生田「えっ！全然すごいじゃん！」
松村「待って待って、これ毎日なの？」
「ほぼほぼね笑」
1日通しのお仕事。
私は、持参したお弁当を食べていた。
中学校に入学してから多いんだよね。
現場にお弁当持ってくること。
あんまり楽屋で食べてなかったから、みんな知らなかったのか。
だいたい、移動中の車の中で済ませてたからね。
生田「彩りもバランスもバッチリじゃん！」
「まぁね…笑」
松村「しかも、捨てられる容器だし」
「帰るの遅い日も多いからね」
生田「しかもさーあ、Aの服っていっつもアイロンかかってるよね」
松村「それもお母さん？」
「うん、そうだね」
生田「すっご！」
松村「ねー、めちゃくちゃ気配りできるお母さんやね」
私の身の回りのことは、全部ママがやってくれている。
徹底した管理ぶり。
本当に助かってるし、感謝してる。
この気持ちに嘘はない。
ママがいなかったら、私はこんなにお仕事に専念出来てない。
もちろん、私立の中学校にも通えてない。
生田「いやぁ、いいお母さんだね〜」
松村「ほんま、うちのママにもなって欲しいわ」
生田「お母さんがこれだけ素敵だから、Aもハイスペックなんだね」
「そんなことないよ…笑」
松村「Aのママ、すごいAのこと応援してるもんね。
こういったとこまで管理してくれて、全身全霊やねぇ」
生田「美人だし、何でも出来るしって。
もう、最高のお母さんじゃん！」
「うん…笑」
松村「こないだも、一緒に旅行行っとったよね」
生田「えー！めっちゃ仲良しー！」
「総選挙のご褒美ね」
松村「うち、お母さんと離れとるもんなぁ。
旅行とかしばらく行ってへんもんなぁ」
生田「自慢のお母さんだね〜」
松村「ええなぁ、Aは」
生田「ほんと羨ましいよ〜」
決まってこう言われる。
そうなのかな。
やっぱり私は、高望みしすぎなのかな。
ママは良いお母さんなんだ。
つまり、私がいけないのだ。
心に燻る残り火には、気づかないふりをしよう。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月29日 14時
