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橋本side
Aのお母さん。
このワードが聞こえるだけで、私の体は反応してしまう。
それほど敏感になってしまったらしい。
当たり前か。
あんな辛そうなAの顔を見てしまったんだから。
橋本「お弁当、お仕事の日も作ってくれるようになったんだ」
「現場のお弁当は、栄養が偏るからって。
ほら、思春期って太りやすいでしょ？
肌も荒れちゃうし。
食生活の乱れって危険だからって」
橋本「まぁ、間違ってはいないけどさ…」
「最初は、学校から仕事に行く時だけだったんだけどね。
だんだん習慣化してきちゃったみたいで。
お弁当作ってあげてるんだから、後は気をつけてよねって」
橋本「だから最近、差し入れも食べないんだ」
「だって、もし肌とか体に影響出たら言い訳できないでしょ？」
心配だから、やってあげる。
私があなたに、施してあげてる。
決して間違ってるわけではない。
思春期の女の子には、ある程度の管理をしても良いと思う。
ただ、身内だから心配なのだ。
外部の人間がやるわけじゃないから、そこには感情が入る。
その感情を間違えると…
「…私がいけないのかもしれない」
橋本「え？」
「世の中には、食べられない子もたくさんいる。
遠足の時だって、コンビニのお弁当の子もいる。
それなのに私は…
毎日お弁当を作ってもらって、洗濯された服を着て。
しかも、アイロンまでかけてもらって。
朝だって、起きられない時は起こしてもらえて。
好きな仕事もさせてもらって、私立の学校にも行かせてもらって。
不自由なんてしてないもん。
何一つ、困ってることなんかない」
橋本「そりゃ、物理的にはね」
「それでも、物理的が全てでしょ？
傍から見たら、私は何でも持ってる。
これ以上高望みしたら、バチが当たるよ。
私は、辛いとか苦しいとか思っちゃいけない」
橋本「A…」
「親に対して、そんな風に思っちゃいけない。
最低だよ、そんなことしたら。
ここまで、色々と尽くしてもらってるのに」
想像通りの方向に進んだ。
彼女の母親にとっては、狙い通り。
私からすれば、惨敗。
「しんどいのは、物理的なものの代償。
ちょっと我慢すればいいんだから。
どっちも満たすなんて、そんなの不平等だよ」
橋本「…うん」
子供は、母親が1番の存在なのだ。
母からの愛なしでは生きていけない。
だから、1番愛される方法を選ぶ。
たとえそれが、自分の身を滅ぼすとしても。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月29日 14時
