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何度もリップシンクを撮影し、気合いを入れた前作。
運営の方が思ったよりは、跳ねなかったらしい。
これがラストチャンス。
その空気は、前回よりも固くて重い。
ラストチャンスは、グループだけじゃない。
今のこの布陣も込みでってことだ。
私も、例に漏れない。
『やっぱり、白橋って圧巻だよね。
唇はもちろん、目の使い方が上手すぎる。
どうやったら、その目が出来るの?』
「よく言って頂くんですけど、特別意識はしてないんです。
何かを訴えかけてる目って言われるんですけど、癖で…
無意識にやってるので、どうって言われても…笑」
『天性だねぇ…
それがメンバー全員出来たら、怪物グループになるよ。
福神メンバーは、だいぶ良くなって来てるんだけどね。
まだやっぱ、練習が必要な子もいるかなぁ』
「ですよね…」
『白橋、ちょっと見てあげてくれる?
そのために、白橋のリップシンクをメインに持ってきたんだから。
感覚でやる気持ちも分かるけどさ。
なるべく言語化して、伝えてあげてよ』
「分かりました」
褒めて頂いた後に、さらっとお願いされた。
確かに、5枚もシングルを出してる割にはまだぎこちない。
口の動きは、特に重要視して見られる。
そこが上手くハマらないと、画として綺麗に映らないよね。
:
「あ、真夏ちゃん…」
秋元「Aちゃん」
「リップシンクの練習?」
秋元「うん、なかなか上手く出来なくて…」
「…顔全体を使った方が良いと思う。
真夏ちゃんは、口と手でどうにかしようとしすぎ。
目も眉も全部使ってやってみたら?」
秋元「顔全部…」
「歌おう、作ろうって思うから固くなるの。
自然と歌ってるくらいの感覚で。
伝えることは、目で言えば良い。
言葉はあくまでも、歌詞だから。
音だから、表現は目だよ」
秋元「なるほど…ありがとう」
「ううん、頑張ってね」
秋元「足引っ張ってごめんね」
「経験値が違うから仕方ないよ。
真夏ちゃんは努力してる。
それを見てる人はたくさんいる。
だから、誰も責めたりしないよ」
秋元「…ありがとう」
「今作も一緒に頑張ろ」
秋元「うん…!」
最近、だんだんと話す時間が増えてきた。
グループを1つにする。
そのためには、微妙な溝は埋めていかなきゃいけない。
コミュニケーションもそう、パフォーマンスもそう。
私がその役割を担ってるんだ。
まずは自分から率先して行動することを覚えた、貴重な1日。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年1月25日 11時