中学生活、スタート ページ22
『A、そこ立って！』
「はいはい」
『はい、可愛い〜』
「ありがとう」
『ママも映りたいから自撮りして？』
「はーい」
季節は4月になった。
新学期。
気持ちが引き締まるシーズン。
私は晴れて、私立の中学校に入学した。
受験をくぐり抜けた勲章。
まだ着慣れない制服に、先日届いた校章を付けた。
なんだか生まれ変わったみたいだ。
『やっぱり、校舎が綺麗ねぇ』
「ね、広いよね」
『先輩方も品があるし、Aにピッタリ』
「自由な校風って言ってたけど、本当にその通りだね」
『素敵な学校、ママが通いたいくらい』
「ママの学校も素敵だったんでしょ？」
『女子校だったから、雰囲気は似てたわよ』
満開の桜に挟まれたアーケード。
ママと2人で歩く。
道の脇には、同じ制服を身につけた先輩が新歓をしている。
これぞまさしく、中学校って感じ。
品のある仕草が、何とも聡明で美しい。
:
『あの…白橋さんですか？』
「あ、はい…白橋です」
『やっぱり…噂になってたんです。
今年の新入生に、芸能人がいるって。
ここ、芸能活動もOKの学校だから』
「あ、そうなんですね」
『しかも、全国模試で名前載ってましたよね？』
「まぁ、昔の話ですけど…」
『…本当に存在するんだ！
私、白橋さんに会いたくて頑張ったんです。
噂で、ここ受けるって聞いて…
芸能人と友達だなんて、夢じゃないですかぁ』
「えー、なんか嬉しいです」
『同じクラスにまでなれるなんて、私は全ての運を使い果たしました笑』
「そんな…笑」
『これからよろしくお願いしますね！』
「お願いします…！」
『じゃあ私、先に行って席確認してくるので…！』
「あっ、名前…」
体育館に向かってたら、後ろから声をかけられて。
嵐のように話して、そこから立ち去って行った少女。
同じクラスって言ってたけど、名前聞きそびれた。
てか、そんな噂になってたのかな…
『ああいう子は、気をつけなさいね。
何を目的にして近づいてくるのか、分からないから。
芸能人と友達になりたいだけって子、多いのよ。
あんまり深く付き合っちゃダメだからね』
「うん…」
『あ、体育館を背景にしても撮ってあげる。
これなら、後ろ隠せばブログにも使えるでしょ？』
「ありがとう」
いつになく、テンションの高いママ。
私の中学校生活は、葉桜がチラつく中、幕を開けた。
波乱万丈の3年間のスタートだ。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月25日 11時
