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大島side
「優子さん…ﾋｯｸ」
大島「何か辛いことあったんだね」
「…(ｺｸﾝ)」
大島「そっか、辛かったね」
AKBINGOの収録後、帰ろうとしたらAが追いかけてきた。
泣いてる。
泣きながら話しかけてくるなんて、滅多にない。
もうだいたい、内容は分かっていた。
Aも言葉にするのすら辛いだろう。
だから、敢えては聞かない。
「ママが怒った…」
大島「うんうん」
「私が嫌味だからって。
自信ないフリしてるのがムカつくって。
自信がないんじゃないのに、怖かっただけなのに。
ママに怒られるのが、怖かっただけなのに…っ」
大島「A、おいで」
「嫌味で臆病で、口ばっかりで最低だって。
私、そんなつもりないのに…っ」
あぁ、選抜発表のことだなって言うのは分かった。
Aが乃木坂に来てから、欠かさずチェックしてるから。
5枚目シングルのことだろう。
選抜自体に大きな変化がないから、せめて発表方式だけでも…
なんていう、メンバーの気持ちを無視した目論見だ。
そのせいで、私の…私たちの大切なメンバーは苦しんでる。
大島「あれね、やり方も良くなかったよね」
「やっぱりそう思いますか…」
大島「うん、あれはメンバーの気持ちを弄びすぎてると思う」
「それなのに…っ」
大島「A、あの日あんまり調子よくなかったでしょ？
もしかして、その前からプレッシャーかけられてた？」
「なんで…」
大島「優子さんはねぇ、Aちゃんのことよーく見てるんだよ。
守るって言ったのは、口だけじゃない。
本当に助けて欲しい時に気づけなかったら、意味ないでしょ」
「優子さん…っ」
彼女の隠してきた部分を見てしまってから。
私は、より注意して彼女を見てきた。
だから、ちょっとの変化でも分かるんだ。
大島「Aは、自分が思ってるより力あるんだよ。
お母さんが言うより、もっとずっとね。
まだ、分からないかもしれない。
信じられないかもしれない。
その時は、いつでも何度でも教えてあげるからね」
「ありがとうございます…っ」
大島「でも、辛いって言えるようになって偉かったね」
「うん…っ」
大島「頑張った…頑張ったね」
「…はいっ」
抱きしめた背中は、ちょっと震えていて。
でも、摩ったら落ち着いて。
彼女の力になれてると感じた。
私がアイドルでいる時間。
それはそんなに長くはないから。
最後の1秒まで、持てる愛は渡したい。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月25日 11時
