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橋本side
橋本「珍しいね、こんな時間に来るなんて」
「ごめん…」
橋本「全然いいよ、寝るつもりなかったし。
ちょっと散らかってるけど入ってー」
「お邪魔します…」
日付が回って少し経った。
さー、夜は長い。
これから何しようなんて、夜行性みたいなことを考えてた。
そしたらAが、今から行くって連絡をくれたじゃないか。
当たり前だけど、Aはまだ11歳なのでこの時間は眠ってる。
珍しくて驚いたけど、顔を見て理解。
これは、何かあった顔だね。
:
「…私ね、中学受験するの」
橋本「あー、さゆりんが言ってたかも」
「そういう約束で乃木坂に入ったの。
アイドルになっても、勉強に手を抜かないって。
必ず中学受験もするって。
目指してる中学があるんだ。
今、偏差値が65ある」
橋本「すごっ…」
「でも、行きたい学校…受ける学校は偏差値68。
私にとって、この夏は勝負なの」
橋本「うん…」
「でも…乃木坂の活動もある。
AKBさんの活動も、コンサートもある。
合間を縫って夏期講習に行くの。
多分、そこまでして受験なんてしたくない。
私はもう、中学受験は目指してない」
最大の矛盾と思った？
私は、そうは思わなかった。
短い会話だけど、ちゃんと伝わった。
彼女の心の底にある苦しみが。
あぁやっぱりなと、どこか納得する部分もあった。
橋本「でも、嫌だって言えないもんね」
「うん…」
橋本「しんどいね、A」
「ななみん…っ」
橋本「そっかぁ…もしかして、ずっとそうだった？
共有スペースでは、結構勉強してたけど。
あれも本当は、しんどい気持ちを抱えてた？」
「うん…っ」
橋本「そうだったんだね」
「でも、頑張るしかないの。
このまま全部やるって選択肢しかない。
どれも諦められないの。
でも大丈夫、多分出来ちゃうと思う。
今まで何度も、こんな夏休みを過ごして来たから。
みんなには言わないし、辛そうな素振りも見せない。
ちゃんと全部やるって約束する。
だから、今だけ許して？」
橋本「もちろん…おいで？」
「ななみんは、ママのちらし寿司食べなかったから。
もしかしたら何か勘づいたのかなって思って、だからつい…」
橋本「うん、分かったよ」
「ありがと…」
彼女が発する言葉と、言わされてる言葉。
まだ幼いから、その境界を切り離すことは不可能だろう。
時が来たら、その時だ。
それまで私は、彼女の支えでいよう。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月13日 1時
