凍てつく打ち水 ページ15
「えっ…」
『A、おかえりなさい』
「ママ…」
『ただいまは？』
「うん、ただいま。
ずっと私の部屋にいたの？」
『そろそろ戻って来るかなって思ってね。
総選挙お疲れ様、ランクインして良かったわね』
「うん！ありがとう！」
リビングには、ママがいたから驚いた。
今日はもう遅いし、来ても明日だろうって思ってたから。
電気も付けないで居たから、まぁびっくりしたけど。
でも、ママからもおめでとうって言ってもらえた。
それはこの上なく、嬉しい言葉だ。
『どうだったの、総選挙は』
「やっぱりね、すごい戦いの場だったんだ。
裏側もピリピリしてて、真剣な空気で。
始まっても、ずーっとドキドキしてるの。
そんな現場初めてだったから、すごい緊張してね…」
『ふーん…それで？』
「え？」
『それで、どう思ったの？選挙に出てみて』
「やっぱりAKBさんはすごいよ。
色んな意味ですごいなって、改めて思った」
『そうだったの…他には？』
「あとはやっぱり、楽しかったかなぁ。
夢の場所に立てて嬉しかったって気持ちもある」
『あのさ…』
「でも、悔しいって気持ちもある。
速報からあれだけ順位上げたのはすごいと思うけど。
実際、もうちょっとで選抜に手が届いたわけだし。
結果を見たら、やっぱり悔しいなとも思った」
『そりゃそうだよね』
でもそれは、ほんの一瞬のことで。
すぐに感想を求められた。
よくない流れなことは、空気で分かる。
けど、流されたくなかった。
私の中で芽生えたプラスの感情を無視したくなかった。
だから強情張ってしまったけど、あえなく失敗。
『今回、残念ながら選抜にはなれなかった。
AKBさんの壁は、思ってたより厚かったってことね。
多分、どこかで見くびってたんじゃない？
乃木坂の中では、そこそこ知名度あるしって。
そういう、ファン目線から来る甘さだと思うな』
「…ごめんなさい」
『来年があるかは分からないけど、出来ることはいっぱいある。
乃木坂の代表として出るなら、もっと相応しい人にならないとね』
「うん、分かった」
『頑張らないと、乃木坂のトップメンバーなんだから。
ママも、もっと頑張るからさ。
やっと世間に乃木坂の名前を出せたから、ここからだよ』
「うん…頑張る」
そうだ、頑張らなきゃいけないんだ。
自分で言ったじゃん、乃木坂の代表としてここにいますって。
ママは、間違ったことは言ってない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 133人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月13日 1時
