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『乃木坂46、1stシングル選抜発表〜！』
威勢のいい日村さんのコール。
私たちの部屋とは、随分と温度感が違う。
だからこそ、より現実味が増していた。
これは夢ではない。
着実に、戦いは始まっているのだ。
魂の深いところが、ぞわっと疼く気がした。
『メンバーは、別部屋に待機してもらってます。
選抜に選ばれたメンバーには、携帯電話に電話がかかってくるそうです。
そしたらそのメンバーは、スタジオまで来てください』
選抜発表は、遠隔で行われる。
私たちは、携帯電話を各々で持たされていた。
選抜メンバーの携帯にのみ、着信がある。
誰にかかってくるかは分からない。
異様な空気感の中、発表は始まった。
初めに電話がかかってきたのは…
白石「…はいっ……ありがとうございますっ」
まいやんだった。
誰がどう見ても、乃木坂の中心メンバー。
あれから何度も、雑誌の撮影に呼ばれてる。
本当に綺麗だし、もちろん努力もしてる。
みんな納得の人選だった。
それでも、1人呼ばれたことで更に空気は締まった。
息をするのも躊躇われるくらい、張り詰めている。
松村「…ありがとうございますっ」
橋本「…ありがとうございます」
さゆりんとななみんが、立て続けに呼ばれた。
2人の努力は、私が1番傍で見てきた。
自信を持ってそう言える。
一緒にカラオケに通ったし、夜遅くまでレッスン室に残った。
ダンスも歌も、一緒に上達してきた。
だから、私まで嬉しかった。
きっとこれが、アイドルをやっている醍醐味なのだ。
誰かの喜びは、一緒になって喜ぶ。
誰かの悲しみは、一緒になって悲しむ。
その最たる場所が、選抜発表なのだ。
生駒「ありがとうございます…っ」
そして今、生駒ちゃんの携帯が鳴った。
震える体を抱きしめるようにして、スタジオへ向かう生駒ちゃん。
華奢な背中が、更に小さく見えた。
それでも、前を向く足は逞しい。
生駒ちゃんの背中が眩しく見えた。
『生駒里奈さんの番号は、2番です』
選抜メンバーには、各々番号が与えられる。
生駒ちゃんは、2番。
つまりは、センターだ。
デビューシングルは、生駒ちゃんがセンター。
生駒ちゃんに溢れる、少年漫画の主人公感。
生駒ちゃんは泣いてたけど、心配してる人はいないと思う。
彼女が強い人っていうのは、みんな知ってるから。
乃木坂46の方向性を決めてくれるのは、彼女だ。
胸の奥が熱くなった。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月5日 14時
