戦慄はすぐそこに ページ35
リクエストアワー前日。
朝からバタバタしていた。
乃木坂46も、リハーサルに参加していた。
初めて生でAKBさんに会うから、朝からド緊張の私たち。
その中でも私は、特別に緊張してたと思う。
絶対に表に見せないようにしてるけど。
『じゃあ、乃木坂は一旦休憩に入ります。
1時間後に再開するので、ステージに集まって下さい。
白橋は話があるので、ちょっと来て下さい』
「…はい」
次はAKBさんのリハーサル。
乃木坂は一旦休憩になったけど、私は呼ばれた。
この後、AKBさんのお偉いさんにご挨拶することになっている。
もちろん、初めてお会いする方で。
緊張してどうにかなりそうだ。
:
『失礼します、乃木坂LLCの今野と申します』
「白橋Aです」
『お待ちしておりました、AKSの戸ヶ崎です。
どうぞ、こちらにお掛け下さい』
『失礼します』
「失礼します…」
『白橋Aさん、お話は伺っておりますよ。
もちろん、出演メディアも拝見しました。
本当に素晴らしいアーティストですね』
「いやいや、そんな…」
『AKB48は、結成から7年目を迎えます。
ここまでの道のりは、本当に長かったです。
だからこそ、今の人気を嬉しく、有難く思っています。
乃木坂46は、そんなAKBの公式ライバル。
まだデビューして間もない、小さな芽です。
これからどのように成長していくのか、僕自身も楽しみです。
そして、その成長に携われるのはもっと楽しみです』
『こちらこそ、本当にありがとうございます』
「ありがとうございます…」
『白橋さんには、ぜひAKBの一員としても頑張って欲しい。
メンバーに刺激を与えて、切磋琢磨して成長していってほしい。
それが出来るメンバーだと確信しています。
これから、どうぞよろしくお願いします』
『こちらこそ、至らない点もあると思いますがよろしくお願いします』
「よろしくお願いします…」
今野さんに倣って、言葉を発するのが精一杯だった。
アウェーフィールドは、想像より孤独だ。
急激な不安に襲われた。
だからといって、後戻りできるわけじゃないけど。
『大丈夫、アウェーじゃないよ。
AKBはチームプレーが取り柄だから』
「はい…」
『白橋さん、期待してますよ』
アウェーじゃない。
そう断言してもらえただけで、少し心が軽くなった気がする。
期待されるのは嫌いじゃない。
でもまずは、自分が自分に期待してあげることが必要なのだと思う。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月5日 14時
