選ばれたならば覚悟を決めて ページ13
『はい、収録はこれで終了でーす』
お疲れ様でした、の声が疎らだ。
私も忖度するように、声を小さくしてしまった。
良くないとは分かってるけど…
スタジオの空気は重く、泣いてる子もたくさんいた。
私は、その場に立ってボーッとしていた。
話す気も動く気もなく、うつむき加減で。
白石「おめでとうA」
「まいやんもおめでとう」
白石「ありがとう」
「一緒になれて良かったよ」
白石「うん、ポジション隣で嬉しいよ」
「私も、まいやんとさゆりんが隣で嬉しい」
まいやんとも、これ以上の会話が続かない。
選抜発表とは、想像していた以上にナイーブな場だ。
手探りで話している様子が肌で伝わる。
この場にいる人は、みんな選抜に選ばれた人。
そう分かってはいても、この空気感だ。
楽屋に帰る気になんて、到底なれなかった。
生駒「…うちには無理だよっ」
生田「大丈夫だよ、生駒ちゃん」
橋本「うん、出来るよ」
生駒「うちには無理だよ、センターなんてそんな…っ」
高山「生駒ちゃんなら出来ると思うな」
生駒「そんな器用じゃないし、うちより相応しい人はたくさんいるもん」
目の前で、生駒ちゃんが泣いていた。
センターというのは、誰にも分からないプレッシャーなんだろう。
私には、理解することができない。
だから、何も言わなかった。
生駒「私より、Aとかまいやんの方が人気なのに…」
白石「そんなことないよ」
生駒「そんなことあるよ」
「生駒ちゃん…仮にそうだったとしてだよ?
人気がある=センターではないと思う。
スタッフさんが、生駒ちゃんにセンターを任せたいと思った。
それが全てだと思うけど、どうかな?」
生駒「そうだけど…」
「私たちも頑張るからさ。
生駒ちゃんのこと、支えられるように頑張るから。
生駒ちゃんは、センター頑張ってよ。
みんなで一緒に頑張ろうよ」
白石「そうだよ、私たちの方がお姉さんなんだから!
出来ることあったらやるから、一緒に頑張ってこ!」
橋本「うん、私たちのことも頼って?」
松村「うちも頑張るからさ!」
生田「私もみなみも、隣にいるからね」
生駒「…ありがと」
高山「乃木坂のデビュー曲なんだから、いい曲にしよう!」
言わないのは逃げだ。
厳しくても言いたい。
それは、自分自身にも。
全く悔しくないわけじゃないから。
目指すポジションは、もっと上にある。
私はこの期間、誰よりも努力する。
111人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年1月5日 14時