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『AKBになれるって…お2人に直接言われたの？』
「うん、オーディション受けてみたらって。
優子ちゃんがファンの子に勧誘するの、初めてなんだって！」
『そっかぁ…』
「…お姉ちゃん？」
『そのことで、私も話があるんだけど…』
こんなに熱量が漲ってきたのは、久しぶりだ。
饒舌に語る私に反して、いつもよりグンと冷静なお姉ちゃん。
その目は、私じゃないどこか遠くを見ていた。
心臓が、別の意味で音を立てる。
『こないだ、話があるって言ったじゃない？』
「自由がどうのこうのってやつ？」
『うん』
「それがどうしたの？」
『Aさ……これ、やってみない？』
「何これ？」
『アイドルグループのオーディション。
AKBの公式ライバルだって』
「AKBの公式ライバル？」
『プロデューサーは同じ、秋元康さん。
1期生だから、必ず初期メンバーだし。
Aはアイドル好きだからって思ったんだけど、どう？』
時が一瞬止まった。
お姉ちゃんが私の心を見透かしているようで、ドキドキした。
実は知らないのは私だけで、みんな私の心の内は知ってるんじゃないか。
私の理想を、覗いているんじゃないか。
もしかして、ママも…
『…嫌、かな？
別にね、嫌なら無理にとは言わないの。
ただ、たまたま見つけたからさ。
Aは姉の贔屓目なしに可愛いし、スタイルも良いし。
運動神経もいいし、歌も人並みに上手いし。
もうさ、アイドルになるために生まれて来たんじゃないかって。
AKB応援してるA見てると、つくづくそう思うんだよね』
私が、あっち側に？
そんなこと、私に出来るの？
まだ10歳の私にとっては、大きな壁だった。
それは、物理的にも、精神的にも。
『でもまぁ、決めるのはAだから。
自由になりたいって思うのは、私だけだったのかもしれないし。
Aが同じく窮屈に感じてるとは限らないからね。
こないだはごめん。
私も、決めつけるようなこと言って。
応援してるのが楽しいって人もいるし、そこはあんまり…』
「やる」
『え…？』
「お姉ちゃん、私やるよ」
『ほんと？』
「私、オーディション受ける」
今言わなきゃ、言えないと思った。
変わるなら、今しかない。
ここを逃したら、私はもう自由になれない。
どうしてかは分からない。
直感でそう思ったのだ。
AKB48じゃないけれど、今このタイミングで変わりたいと思った。
だから、自分の足で前に進んだ。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月1日 0時
