選抜という世界線 ページ39
レッスンにもだいぶ慣れてきた暁。
私も、休憩時間にグループ関係なくお喋りできるようになった。
そんなある日、レッスン中に今野さんが入ってきて突然告げられた。
『10月より、乃木坂46の冠番組が始まることになりました』
どうやら、乃木坂だけの番組が始まるらしい。
まだデビューすらしてないのに、テレビに出られるなんて…
嬉しいと素直に思うけど、きっとこんなに甘くはないんだろうな。
そんな私の勘は、まぁよく当たる。
『ただし、出演できるのは17人のみです。
メンバー35人のうち、半分だけということになります。
そして、今から選抜メンバーを発表します。
選ばれたメンバーは、これから収録に向かいます』
さっきまでの興奮はどこへやら、一気に室内が冷めていく。
オーディションと同じくらいか、それ以上の静寂だった。
いきなり発表して、そのまま収録なんて…
予想以上の急展開に頭がついて行かない。
隣にいるまいやんとななみんは、息を呑んでいた。
私は、ただ真っ直ぐに今野さんを見据えた。
『今回の出演メンバーは、レッスンの成果と公式サイトの評判で決めました。
暫定の選抜メンバーということにはなりますが、順次変わっていきます。
選ばれたメンバーもそうでないメンバーも、気を抜かないように』
耳がキンとするくらい、今野さんの声だけが響く部屋。
心臓の音が聞こえてしまいそうだった。
そして、今野さんは手元にある紙を開いた。
__白橋A
私の名前が、トップバッターで呼ばれた。
短く返事をして前に出る。
みんなの視線が、私にだけ注がれていた。
ちょっとばかり、居心地が悪い。
__桜井玲香
__白石麻衣
__生田絵梨花
続々と、名前が呼ばれた。
一喜一憂する空気が流れる。
これが、アイドルというものなのだ。
私が密かに憧れを頂いていた世界。
AKBの裏側は、きっとこんな感じだったんだろう。
知りたかったような、知りたくなかったような気がした。
:
『以上の17名になります。
それでは、移動を開始してください』
17人の発表はあっという間だった。
前に立つと、目の前には選ばれなかったメンバーの顔がある。
私は、顔を上げることが出来なかった。
周りを見ると、半分くらいがそうだった。
きっと、この半分がアイドルというサバイバルを生き抜く運命を分けるのだ。
私も、負けてちゃいられない。
もっと強く、逞しくならなくちゃ。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年1月1日 0時