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橋本side
コンビニに駆け出そうとしたAの足が、ピタと止まった。
不思議に思って追いかけたら、目の前にはAのお母さんがいた。
どうして、ここに…？
単純に浮かんだ疑問だった。
「なんで、ここにいるの？」
『なんでって、引っ越して来たの』
「えっ…」
『当たり前でしょ？
小学生で寮暮らしなんて、出来っ子ないもん』
「どういうこと？」
『私が傍にいれば、Aのお世話ができるでしょ？』
「でも…」
『あぁ大丈夫、寝る時は寮に帰っていいから。
ママの賃貸アパート、ワンルームだし』
「そういう問題じゃなくて…
パパはそれでいいって言ったの？」
『大丈夫だよ、どうせ家いないし』
「え…」
『何よ、せっかく近くに越してきたんだから、もっと喜んでよ』
「いや、嬉しいけど驚いちゃって…」
『今野さんが、親なら合鍵作ってもいいって言ってくれたの。
だったら、近くにアパート借りた方が安心でしょ？
これからは、お掃除もお洗濯もママがやってあげるからね』
「えっ…」
『ご飯は寮母さんが作ってくれるって言うけど…
ママのが良かったら、ママが作るよ？
ママの方が、Aのことよく分かってるし…』
「いや…」
A自身も何にも知らなかったのか、ポカーンとしてる。
寮ぐらしが心配だから賃貸アパート借りるって…
親ってそういうもんなんかな。
ましてやAは、まだ小学生だもんね。
きちんと愛情をかけてもらって来たんだろうなぁ…
『橋本さん？でしたよね？』
橋本「あ、はい…橋本です」
『いつも娘がお世話になっております。
逐一、娘から話は聞いておりますよ』
橋本「そんな…恐縮です」
『これからもよろしくお願いしますね』
橋本「こちらこそお願いします」
『それじゃあA、また明日ね』
「うん…また明日」
何度見ても、美人で佇まいから聡明な人。
Aのお母さんなのが、すごく納得できる。
橋本「……A？行かないの？」
「あ、うん…行く！」
橋本「突然お母さんが来て驚いたね」
「うん…」
橋本「どうかした？」
「あ、ううん…何でもない」
まだボーッとしてるA。
私には、驚きだけの表情には見えなかったた。
彼女のことを、私はまだ何も知らない。
もっともっと、彼女の骨の髄に迫りたい。
そうしなきゃいけない。
可愛い妹ってだけじゃない。
なぜだか、この子を無性に守ってやらなきゃいけない気がした。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月1日 0時
