受かってしまった ページ25
『A…っ!』
「お姉ちゃん…っ」
『本当に受かったんだね!』
「…どうしよう」
『ママのこと?』
「うん……言わなきゃだよね」
『私からママには連絡した。
新幹線で来るから、もうすぐ着くって』
「どうしよう、どうしよっ…」
『A、落ち着いて。
ママだって、ちゃんと話せば分かってくれる。
でも、そのためにはAの意志が必要。
Aは、本当に乃木坂をやりたいんだよね?』
「やりたい」
『これが、Aの本当の気持ちなんだよね?』
「私の本心」
『それなら大丈夫。
お姉ちゃん、絶対味方するから。
ママのことも、必ず説得する』
どれくらい時間が経ったのだろう。
私の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると、そこには会いたかった人がいて。
年相応に、お姉ちゃんに抱きついてしまった。
濁流のように不安が押し寄せてくる。
それは、アイドルになることの不安ではなく、ママに説明する不安。
黙ってオーディションを受けてここまで来てしまったから、怒られないわけない。
そんな近い未来が、私にとっては最大の恐怖だった。
橋本「Aちゃん…もしかしてお姉ちゃん?」
『白橋Aの姉です』
橋本「私、橋本奈々未と申します」
『橋本さん…よろしくお願いします』
橋本「さっきまで、お姉ちゃんの話してたんです。
オーディションを勧めてくれたんだって」
『そうだったんですか…』
橋本「どうかされました?」
『私は彼女をアイドルにしたいと思ってます。
彼女にも、その意志があります。
ただ…それだけでいいのかなぁって…』
橋本「私は…Aちゃんと頑張りたいなって思いますけどね。
年齢も年齢だから、これから話し合いがあるのかもですけど…
それだけで、このチャンスを諦めないで欲しいなって思います」
『橋本さん…』
橋本「…奈々未でいいですよ。
私の方が年下だって、さっき聞いたので笑」
『…じゃあ、奈々未。
Aのこと、よろしくお願いします』
2人が交わってるのを見て、漸く気づいた。
似てるのだ、お姉ちゃんと奈々未ちゃんが。
だから私は、こんなにも奈々未ちゃんに惹かれるんだと思う。
シンパシーとは、こういうことを言うのかもしれない。
__白橋Aの母です
さぁ、決戦の時がやってきた。
怯みそうになる心を、ひたすらに叱咤する。
目を合わせることは、まだ無理だった。
でも、諦めたりはしない。
逃げるな、わたし。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年1月1日 0時