夢が、すぐそこに ページ19
『いやぁ、まさかここまで来るとはね。
分かってたけど、本当すごい！』
「ありがとう…笑」
『特技審査、悩んでたけど何やったの？』
「新体操でポニーテールとシュシュやったよ」
『あー笑』
「え、なに？笑」
『いや、自分のことよく分かってんなーって思って』
「どゆこと？」
『Aが1番可愛く見えるのって、新体操のリボンやってる時なんだよね。
ルックスだったり、表現力だったり。
だから、特技審査通ったんだろうなって…うん、納得だわ笑』
「よく分かんないけど、ありがとう笑」
『その調子で、今日も行ってきな！』
「緊張するけどね…笑」
『そうだろうけど、最終審査なんだから悔いなくね！
受かっても落ちても、楽しかったって思えるようにね』
「うん、頑張ってくる！」
私よりお姉ちゃんが喜んでくれた。
それだけで、オーディションを受けた価値はあったかもしれない。
最終審査の日は、快晴だった。
私は晴れ女だ。
何だか、運まで味方に付けてるような気がした。
今の私には、怖いものはない。
だって後は、楽しむだけだから。
会場に着いても、胸の高揚は収まらなかった。
:
『24番、白橋Aさんですね。
確認できました、頑張って下さい』
「ありがとうございます」
名札を受け取り、写真を撮って控え室に入る。
今までにない、独特の空気が漂っていた。
これまでの私なら、確実に引っ張られていた。
けど、今日は違う。
肩の力を抜いて、前だけを見ていた。
:
『24番の方、お願いします』
「はい」
『自己紹介と歌唱曲をお願いします』
「神奈川県出身、白橋Aです。
AKB48さんの大声ダイヤモンドを歌います」
何人かまとまって部屋に呼ばれ、1人ずつ前に出て質疑応答をするスタイル。
何回かやってきたのに、やっぱり空気が張り詰めている。
それが、最終審査というものなんだろう。
目の前には、秋元康プロデューサーもいらっしゃる。
意外と普通の方なんだなぁ…なんてぼんやり考えていても、一向に曲が始まらない。
周りのスタッフさんが慌てているのに、一瞬遅れて気づいた。
そして、驚くべき宣告をされた。
『すみません、カラオケ機器が上手く接続出来なくて…
白橋さん、アカペラで歌ってもらうことってできますか？』
頭が真っ白になった。
けど、根拠のない自信があった。
今の私なら、歌えそうな気がする。
そして、ゆっくりと首を縦に振った。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年1月1日 0時
