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『…大丈夫?』
「あ、はい…」
『みんな行っちゃったから、私たちも行こう』
「はい…」
『緊張してる?』
「してます…」
『そうだよね、私もしてる笑
多分、みんなしてるから大丈夫だよ』
「…はい」
『どこから来たの?』
「神奈川県です」
『私は北海道から来たの。
こうやって会えたのも、何かの縁だからよろしくね』
「よろしくお願いします…」
人並みに押されてたら、後ろから声をかけられた。
振り返ると、ショートカットのスラッとした人が立っていた。
鼻筋が通ってて、目がパッチリしてて、本当に美人さん。
北海道から来たって言ってたけど、それだけ本気ってことなんだろうな。
美人なお姉さんが引っ張ってくれて、私も移動を開始した。
部屋に入るとすぐ、会いたかったの振り入れが始まった。
:
『それでは、61番から70番の方移動をお願いします。
5人ずつ前後に分かれて踊って下さい』
30分なんて、あっという間すぎる。
いくら踊ったことがあるとはいえ、これはオーディションだ。
細かい所まで見られるのかなとか、色んなことが気になってします。
振り入れした気でもないまま、番号が呼ばれてしまった。
私は番号的に、後列の端の方。
ここだったら、ちょっと失敗しても目立たないかな…
なんて、甘い考えを持ってしまう自分が憎かった。
でも、やるしかないんだ。
桜井さんの言葉を信じて、出来ることを全部出し切ってこよう。
:
『以上の方々になります。
番号を呼ばれなかった方は、ここで終了になります。
荷物を持ってご帰宅ください、お疲れ様でした。
名前を呼ばれた方は、午後から4次審査になります。
ロケバスを用意してるので、中でお弁当を食べて下さい。
集合時間は14時となりますので、それまでは各自自由行動です。
時間に遅れないようにお願いします』
スタッフさんの声が、どこか遠くに聞こえる。
まさか、3次審査を通るとは思ってなかった。
特にミスをしたわけではないけれど、かと言って上手くできたわけでもない。
普通の中でも普通だったと思う。
それなのに、なぜか番号を呼ばれてしまった。
だいたい、3分の2くらいの子が通過した。
荷物を持って帰る子がいなくなると、部屋の空気が解ける。
お弁当を持って、仲良さそうに出ていく子もいた。
この期間で、もうそんなに仲良くなったんだ…
私は、ゆっくりと荷物を持ってお弁当を受け取った。
もちろん、1人だ。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年1月1日 0時