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麻衣side
内心、心臓が飛び出そうなほど緊張しながら、Aに検査結果を伝えに行った。
病室の子達と仲睦まじく過ごすAを見て、怯みそうになる。
そんな自分の弱さを奮い立たせて、Aに向き合ったのに…
拍子抜けするくらい、Aは強かった。
まるで、最初から全部分かってたかのような口ぶりだった。
全てを見通した上で、覚悟を決めて達観した様子のAに、私の方が狼狽えた。
あんなに嫌がってたのに、もう沙友理ちゃんに電話するって…
言われた通りにスマホを差し出した。
私の手は、情けないくらいに震えていた。
麻衣「はい、スマホ」
A「ありがとう」
麻衣「私、奥の部屋いるから。
電話終わったら声かけてね」
A「はーい」
いたたまれなくなって、Aにスマホを渡してすぐに奥の部屋にこもった。
なんで私、こんなに弱いんだろう。
本当に辛いのはAの方なのに…
あの笑顔が無理して作られたものだって、ちゃんと分かってるはずなのに…
絶対に、Aだって強がってるだけなのに…
全部分かってるのに、溢れ出てくる自分の感情を抑えることができない。
主治医なのに、何やってんだろ。
:
大島「ま〜いやん!」
麻衣「優子先生…」
大島「なーに、どうしたの?
泣いたら、可愛いお顔が台無しだよ?」
麻衣「優子先生…っ」
大島「おおっと…どうしたの〜
大丈夫だよ、まいやん」
私の後を追いかけて来てくれた優子先生。
優しい声に、涙が溢れて止まらない。
子供みたいに、優子先生に抱きついてしまった。
Aに悪いと思いながらも、泣くことしか出来なかった。
ごめんねA。
こんなに弱いお姉ちゃんで、本当にごめんなさい。
麻衣「わたし…っ」
大島「まいやんのせいじゃないよ。
もちろん、Aのせいでもない。
誰が悪いとかないから、難しいよね」
麻衣「なんで、Aばっかり…っ
今まで、たくさん頑張ってきたのに…っ
こないだの入院が最後だよねって、あの時言ったのに…っ」
あの時のAの笑顔が、ずっと頭の中にこびりついてる。
生まれた時から体が弱くて、入退院を繰り返してきた。
幼稚園に上がるまでは、1年のほとんどを病院で過ごしてきた。
何度も治療をして、少しずつ入院の回数と長さが減っていって…
こないだが最後の入院になるねって、一緒に頑張ったのに…
その約束を破る形になってしまったのが、医者として本当に情けない。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2022年5月8日 22時