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ページ43

麻衣side


内心、心臓が飛び出そうなほど緊張しながら、Aに検査結果を伝えに行った。

病室の子達と仲睦まじく過ごすAを見て、怯みそうになる。

そんな自分の弱さを奮い立たせて、Aに向き合ったのに…

拍子抜けするくらい、Aは強かった。

まるで、最初から全部分かってたかのような口ぶりだった。

全てを見通した上で、覚悟を決めて達観した様子のAに、私の方が狼狽えた。

あんなに嫌がってたのに、もう沙友理ちゃんに電話するって…

言われた通りにスマホを差し出した。

私の手は、情けないくらいに震えていた。




麻衣「はい、スマホ」


A「ありがとう」


麻衣「私、奥の部屋いるから。

電話終わったら声かけてね」


A「はーい」




いたたまれなくなって、Aにスマホを渡してすぐに奥の部屋にこもった。

なんで私、こんなに弱いんだろう。

本当に辛いのはAの方なのに…

あの笑顔が無理して作られたものだって、ちゃんと分かってるはずなのに…

絶対に、Aだって強がってるだけなのに…

全部分かってるのに、溢れ出てくる自分の感情を抑えることができない。

主治医なのに、何やってんだろ。




:




大島「ま〜いやん!」


麻衣「優子先生…」


大島「なーに、どうしたの?

泣いたら、可愛いお顔が台無しだよ?」


麻衣「優子先生…っ」


大島「おおっと…どうしたの〜

大丈夫だよ、まいやん」




私の後を追いかけて来てくれた優子先生。

優しい声に、涙が溢れて止まらない。

子供みたいに、優子先生に抱きついてしまった。

Aに悪いと思いながらも、泣くことしか出来なかった。

ごめんねA。

こんなに弱いお姉ちゃんで、本当にごめんなさい。




麻衣「わたし…っ」


大島「まいやんのせいじゃないよ。

もちろん、Aのせいでもない。

誰が悪いとかないから、難しいよね」


麻衣「なんで、Aばっかり…っ

今まで、たくさん頑張ってきたのに…っ

こないだの入院が最後だよねって、あの時言ったのに…っ」




あの時のAの笑顔が、ずっと頭の中にこびりついてる。

生まれた時から体が弱くて、入退院を繰り返してきた。

幼稚園に上がるまでは、1年のほとんどを病院で過ごしてきた。

何度も治療をして、少しずつ入院の回数と長さが減っていって…

こないだが最後の入院になるねって、一緒に頑張ったのに…

その約束を破る形になってしまったのが、医者として本当に情けない。

・→←断腸の思い



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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2022年5月8日 22時

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