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ななみんの顔が、頭に浮かぶ。
ごめんねって泣く顔、Aなら大丈夫って頷く顔。
不安と自信が入り交じった顔が、私の脳裏に焼き付いている。
最後まで、橋本奈々未は橋本奈々未だった。
私の知ってる、私が大好きなななみん。
だからこそ、寂しいだけの感情じゃいけないって思う。
それは、一方通行な私の想い。
わがままに近い、独りよがりな願いだ。
「でも…その子のこと、よく知ってるから。
今までどんな道を歩んで来て、その先にある未来が分かっちゃってるから。
自分の夢、叶えて欲しいんです…！
乃木坂じゃない場所で、次の夢を追いかけたいって思ってるなら…
私は応援したいし、背中を押したい。
自分の幸せのために、時間を使ってほしい。
ちゃんとそう思う気持ちがあるのに…
私…わがままだから。
頑張れないって、言っちゃったんです…っ
その子のいない乃木坂で、私は頑張れるか分からないって…っ」
渡辺「うんうん、寂しかったんだもんね。
偉いよ、ちゃんとその子のこと考えられてて。
わがままなんかじゃないよ。
すごく大切な存在なんだから、頑張れないって思っちゃうよ。
悲しいのは、その子への思いが深い証拠だよ」
「麻友さん…っ」
渡辺「本当に遠慮しなくていいよ。
さっきも言ったけど、寂しい時はたくさん泣きな？
AKBの仕事だからとか、気にしなくていいからね」
「ふぇ…ﾋｯｸﾋｯｸ」
渡辺「大切な人との別れは、なかなか落とし込めないよ。
でも、Aならいつか必ず乗り越えられる。
優子ちゃんとも、たかみなさんとも。
Aは寂しい気持ち乗り越えて、頑張って来れたんだから。
きっと大丈夫だよ、いつか必ずその日は来る。
私はそれまで、一緒にいるからね」
「寂しい…ﾋｯｸﾋｯｸ」
渡辺「確かに、AKBと乃木坂の別れは意味が違うと思う。
それでも、大切な存在は変わらないから。
同じくらい寂しさを乗り越えて来たのは事実だから。
その事実は、私たちが知ってる。
辛くなったらいつでもおいでね。
私は、何があってもAの味方だから」
「ありがとうございます…っ」
渡辺「そのための先輩なんだから、遠慮しちゃダメだからね〜？」
一度、その優しさに触れたら戻れなくて。
どんどん深い所まで沈んでいく。
苦しさなんて一切なくて、ただ安心できる温もりだけが存在していて。
心地よくて、そのまま身を委ねて沈んでしまった。
最初の波を超えるまで、少しだけ許して下さい…
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年5月5日 23時
