この波を越える方法 ページ40
ななみんの卒業を聞いて、まだ気持ちの整理がつかなくて。
気を抜くと悲しみに襲われて、涙が出そうになる。
あまり考えないようにしようと頑張ってたんだけど…
今日は、ぱるるさんの卒業関連のお仕事がある。
卒業という単語にナイーブになってる今、とてもじゃないけど平静でいられなかった。
こんなんじゃ、アイドル失格だよ…
頭では分かっていても、そう簡単に切り替えられるほど私は強くない。
渡辺「A〜っ」
「麻友さぁん、お疲れ様です」
渡辺「衣装チェンジ終わった？」
「終わりましたぁ、今待ちです」
渡辺「私もだから一緒に待ってよ〜」
「ぜひぜひ…！」
渡辺「ねぇAちゃん…今日、何か元気ない？」
「え…そんなことないですよ」
渡辺「う〜ん…そっかぁ。
なんか、いつもと違う感じしたんだけどなぁ。
泣くの我慢してるっていうか…」
「えぇ、そうですかぁ」
渡辺「ま、気のせいならいいんだけどさ。
何かあったなら、私で良ければ聞くよ〜」
麻友さん、さすがの鋭さです…
私、そんな泣きそうな顔してたかな。
確かに、さっきの撮影は別れムード全開だったけども。
悲しい時に優しくされると、無性に縋りたくなってしまう。
それはもはや、人間の性なのかもしれない。
「…あの」
渡辺「うん、どしたぁ」
「大好きで、特別な存在だったメンバーが…
卒業を決めちゃったんです…っ
私、その子にずーっと支えられてきて…
アイドルとしてだけじゃなくて、人として。
生きるために必要な存在だったんです…っ
大袈裟かもしれないけど、それくらい大切で。
私…その子がいなくなっちゃったら…っ」
渡辺「そっかぁ…寂しいね。
悲しいね…よしよし、おいで」
「すみません…」
渡辺「気にしなくていいの〜
寂しい時は、こうやって甘えていいんだよ？
泣きたい時は泣きたいだけ泣いていいの。
そうやって、たかみなさんと約束したでしょ？」
「麻友さん…っ」
渡辺「心の支えがいなくなっちゃうの辛いね。
きっとAちゃんは、その子に助けられて来たんだろうね。
それで、ここまで続けられたんだろうね」
「はい…」
渡辺「いきなりその支えがなくなっちゃったら、そりゃ戸惑うよ。
経験値の問題じゃない、その子への愛の深さの問題だと思うな」
麻友さんは、いつものように優しい。
お姉ちゃんのように、私をよしよししてくれて。
キラキラの瞳から、真っ直ぐに想いを届けてくれる。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年5月5日 23時
