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バトンを繋ぎたい ページ38

松村side


まいやんから、少し早めに来てと連絡をもらっていた。

入り時間の30分前に楽屋に入ると、もう2つのシルエットがあった。

抱き合った背中が、不規則に動く。

私と目が合うはずの位置にいるのは、ちっちゃくなったエース。

今日は全然、あの大きな瞳と目が合わない。

まいやんの肩を濡らして、顔を上げる気配すらない。

あぁ、泣いてるんだな。

無言で駆け寄って、おはようと背中を摩った。




白石「さゆりちゃん…っ」


松村「おはようまいやん、大丈夫?」


白石「ん…だいじょぶ」


松村「A、おはよ」


「さゆりん…ヒックヒック」


松村「寂しいね、辛いね…」


「ななみん卒業しちゃう…ック」


松村「うん…寂しいよね」


「Aがんばれない…ヒックヒック」


松村「頑張れないかぁ…」


「がんばりたくない…絶対むりぃ…ヒックヒック」




お姉さんのまいやんは、だいぶ落ち着いてきた様子。

真っ赤な目こそしてるけど、冷静に現実を受け止められてる。

問題は、イヤイヤと被りを振る妹の方。

久しぶりに、こんなに感情オープンな姿を見た。

不謹慎だけど、素直に感情表現してくれて安心してる自分がいた。

そうそう、こうやって泣いていいの。

我慢しないで欲しい。

支える準備は、出来てるんだから。




松村「そうやんな、ななみんに支えてもらって来たんやもん。

卒業しちゃったらどうしようって、戸惑うの当たり前やんな」


「だってね…ヒックヒック

辛かった時ね、ななみんずーっと傍にいてくれたんだよ?

泣いても苦しいって言っても、ななみんすぐ駆けつけてくれた。

何も言わなくても、敏感に察してくれた。

苦手な電話も、ななみんだったら勇気を持って掛けられた。

時には、持ってる言葉の綾でママと戦ってくれた。

私の目を覚ましてくれたこともある。

今まで誰にも言ってこなかったこと、誰からも言われて来なかったこと…

気を遣って、誰も言わなかったこと…

ななみんは、私に真っ直ぐ言ってくれた。

おかげで私は、大切なことは何かに気づくことが出来たの。

ななみんはずっと…私を正しい道に導いてくれてた…っ!

明るい方、少しでも救われる方にって…

それなのに…私は…ヒックヒック」




自分が貰った愛情。

彼女が求め続けていたものを、こんなに近くで施してくれる人がいた。

そんな存在は、Aにとって貴重すぎる。

だからこそ、感情も揺れる。

不安定な天秤に掛けられて、ゆらゆらと揺れる。

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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年5月5日 23時

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