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橋本「きっかけは、お母さんの手紙だった。
私に弟がいることは知ってるよね?」
「うん…」
橋本「弟が、今年の春に大学に進学したの。
勉強…すごい頑張ってくれたみたいで。
学費免除で入学出来たんだ。
地元の大学に受かってくれたから、自宅から通うって。
それはつまり、私が弟の学費を稼ぐ理由がなくなったってことね。
お母さんももう、安定した生活を送れるようになったんだって。
電気も水道も止められず、裕福ではないけど人間らしい生活が出来てるんだって。
少し帰省した時に、実際に会って話を聞いてきた。
弟も無理なく大学生活を送れてて、お母さんも随分と明るくなってた。
嘘じゃない、遠慮でもないって実感した。
無理せず好きなことをやって欲しいって、お母さんから言われた。
自分の大学の奨学金も、全部返し終わったの。
仕送りの必要もなくなって、自由になったんだ。
元々ね、卒業は意識し始めてたの。
その時に背中を押してもらって、今だなって決めた。
私が乃木坂に入った使命は達成したんだなって思ったから。
Aが自分の使命は成し遂げたって思ったように、私も自分のやるべきことはやった。
そう自分で実感したから、決心したんだ」
ななみんのお母さんには、私も会ったことがある。
穏やかで、冷静で誠実で、ななみんによく似てる。
1歩後ろから子供を見守り、節目節目で背中を押してくれる。
決して、自分の理想や苦労を子供に押し付けない。
それどころか、私のせいで苦しめてごめんねって、ことある事に電話までくれて。
本気で子供のことを思い、当たり前のように愛を施してくれる。
私が、理想とするお母さんだ。
そんなお母さんが、ななみんに助言をしたということは…
きっと、ななみんが自分のために頑張ってるってずっと思ってたんだろうな。
もう自分は大丈夫だから、後は自由になってほしい。
温かすぎる、お母さんからの愛だ。
私がずーっと求めていた、無償の愛。
私には決して与えられないものを、ななみんは貰った。
もし、自分がななみんだったら…
とてもじゃないけど、その愛を受け取らない選択肢がなかった。
__ずるいっ
私には、こう言うしかなかった。
それ以外の言葉が見つからなかった。
だって、子供が1番欲しくて堪らないものだから。
受け取るななみんの気持ち、私が1番理解出来るから。
私が何も言えないことを分かってたから、ななみんはあれだけ念を押したんだと思う。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年5月5日 23時