夢の足跡 20 (ページ24)

今日:23 hit、昨日:21 hit、合計:57,698 hit

・ページ24

まゆちゃんに背中を押してもらい、私は今野さんの元に向かった。

こうやって向かい合うの、久しぶりだな…

私から話があるって言うこと、あんまりないし。

呼ばれた時の方がよっぽど緊張しないや…

『A、話ってどうした？』

「あの…」

『まさか…卒業とかじゃないよね？』

「乃木坂は…」

『…ってことは』

「AKBさんとの兼任を、そろそろ解除させて欲しいです」

『そっか…やっぱり、そう来るよね。

ここ最近のスケジュールと、今決まってる仕事だけでもね…

うん、これ以上は厳しいよね』

「はい…それに、もう私の役目は終わったかなって思ってて。

乃木坂を上げるためだったけど、もう乃木坂は独り立ち出来る。

本来、兼任の目的は乃木坂の底上げをして知名度を上げることでした。

でも、今の乃木坂にその必要はありません。

次は私も、みんなと一緒にAKBさんの背中を追いかけたいなって思ってます」

『うん、そうだよね』

「AKBさんで学ぶことは全部学んだと思うんですけど、今野さんから見てどうですか？」

『ほんっと…よく頑張ってくれたよ。

僕たちが想像していた以上のものを持って帰って来てくれた。

最初は本当に、乃木坂のハングリー精神に火をつけるためだった。

それが段々、スキルをアップさせること、憧れの舞台を先に踏んで闘争心を持たせること…

AKBからグループアイドルのイロハを持ち帰ること、自分の軸を持てるようになること…

そうやって、どんどんハードルが上がっていって。

でもAは、全部応えてくれて。

時には厳しく、でも優しくグループを引っ張ってくれて。

傷つきながらも、身を呈して教えてくれた。

夢を見れば、叶えるための努力をすれば報われるって。

重たすぎるものを背負わせ続けてごめん。

デビューから4年半、ありがとね』

「良かったぁ…」

『反対するかと思った？』

「もうちょっと頑張ってって言われるかと思った…笑」

『そんなことは言わないし、言えないよ笑

まぁ、今すぐってわけにはいかないけどさ。

感謝しかないもん、止める権利はないよ』

意に反して、今野さんは優しかった。

まるで全て分かっていたようだ。

ストップも否定もされなかった。

むしろ、遂にこの時が来たかと納得しているように見えた。

今野さんもまた、私の成長を傍で見守ってくれていた大人の1人。

この日を待っててくれたのかもしれない。

だから、私の方が意表を突かれてドギマギしてしまった。