階段を一歩上って ページ3
飛鳥side
「あすか…っ！」
飛鳥「A…」
「お疲れ様…っ！」
飛鳥「ん〜っ」
泣いては泣き止み、また泣いて。
繰り返すこと数ターン。
聞きたかった声で、名前を呼ばれてしまった。
そんなことされたら、我慢できないよ。
暗くなった視界を盾に、構わず泣いた。
背中を優しく摩ってくれるリズムが、なんとも言えず心地良い。
「かっこよかったよ飛鳥」
飛鳥「Aもかっこよかった…！」
「出来たじゃん、センターと座長」
飛鳥「みんながいてくれたから…っ」
「当たり前よ、みんな支えるに決まってるじゃん」
飛鳥「嬉しかった…っ」
「飛鳥が頑張りたいって思って、行動してたからだよ。
だからみんな、自然と支えたいって思って行動出来たの」
飛鳥「Aも頑張ってたから…！
玲香いない中で、不安だったはずなのに。
自分だけじゃなくて、グループのこと考えて…っ
大変だったはずなのに、A楽しそうだから。
弱音吐かずに頑張る姿、見てたから…っ」
私が頑張れた理由の1つは、紛れもなく君の存在。
立場は違えど、グループを引っ張る立ち位置にいた。
感情の波に流されず、強く清く立ち居振る舞う。
誰でも出来ることじゃない。
君だから出来たこと。
だから、私も負けじと頑張ろうと自分を鼓舞できた。
そんな関係性になれたことが誇らしかった。
飛鳥「玲香ちゃんが戻ろうって思えた気持ち、すごく良く分かる」
「私は、飛鳥を見てたらよく分かったよ」
飛鳥「Aがキャプテンで良かった。
一緒にこの夏頑張れて、本当に良かった…っ」
「ねぇ、そんな言わないで…っ」
飛鳥「だってほんとのことだもん…っ」
「飛鳥…ずるいっ」
飛鳥「ほんとの気持ち、たまにはいいでしょ」
「私も、飛鳥と頑張れて良かった…っ」
飛鳥「これ以上泣かせないで…」
「そっちこそ…ｯｸ」
飛鳥「Aはいいよ、泣きなよ。
ずっと泣くの我慢してたんでしょ？
もういいんじゃない、我慢しなくても」
「うぅ…ﾋｯｸﾋｯｸ」
飛鳥「…ありがと」
「さっき…ななみんのとこでも泣いたぁ…ﾋｯｸﾋｯｸ」
飛鳥「なんだよ、もう泣いたのかよ笑」
「でも止まらないぃ…ﾋｯｸﾋｯｸ」
飛鳥「うん…っ」
遠くから見ているだけだった、眩しい背中。
少しだけ近づいて、今この手で触れられて。
同じ色の涙を交わして、高鳴る自分がいた。
いつもと違う夏。
それは、見える景色の色が変わった夏。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年5月5日 23時
