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桜井side


神宮に合わせて調整する。

休養を決めた時から、目標としていた場所。

憧れの地で、誕生日をお祝いしたい。

大好きな仲間と、ファンの皆さんと。

もう一度、あの景色を見たい。

微かな希望が湧いたから、その一筋の光だけを頼りに進んで来た。

道が合ってるかは分からない。

手探りで彷徨う私の手は、両側から握られた。

逞しく、優しい温もり。

私が、この手で襷を託した2人だった。




「…今ので確認終わりだけど、大丈夫そ?」


桜井「うん、ありがとう」


生駒「よし、じゃあ円陣しよ!」


「久しぶりの玲香の円陣〜!」


桜井「あのさ…っ」


生駒「ん、どした?」


桜井「私…円陣の指揮は執らない。

今年の夏、繋いでくれたのは2人だから。

ここで私が前に出るのは違うから。

それは、私が納得出来ない。

途中参加の私には、何て声掛けたら良いか分からないの…

みんなに頑張ろうっていう勇気が、今の私にはないんだ」




手を握り、その温もりをしっかりと感じているのに。

わざわざ私のために、朝早くから嫌な顔一つせず確認をしてくれて。

疲れてるはずなのに、そんなの一切見せずに付き合ってくれて。

こんな素敵な仲間、他にいないって分かっているのに。

だからこそなのか、私には勇気が出なかった。

みんなの前に立って、今までのように声を上げる勇気が。

思わず立ち止まってしまった。

1歩、2歩と先を行った2人が、ほぼ同時に振り返った。

眉尻の下がった顔と目が合う。

何だか無償に、申し訳なく思った。




「玲香…」


桜井「ごめん…なさい」


生駒「…玲香が望むなら、そうするよ」


「うん」


生駒「A、今日やってくれる?

うち、明日やるからさ」


「分かった」


生駒「いいんだよ、気にしなくて。

謝るよりまず、ありがとうがいいかな」


桜井「ありがと…」


「へへっ…じゃあ行こ?」




本調子じゃないけど、ステージに立ちたい。

みんなと一緒に、乃木坂になりたい。

乃木坂46という場所に戻りたい。

そう零した私のわがままを、誰一人嫌な顔せず受け入れてくれた。

当然の如く、そのルートを用意してくれた。

そしてもう一つ。

私は、客観的にグループを見たいとわがままを言った。

自信の無さを、都合のいい言葉で誤魔化した。

そんなわがままさえも、二つ返事で聞いてくれる。

持つべきものは仲間だ。

今度は少しだけ、自信を持ってそう言えた。

差し出された両手は、さっきより温かかった。

・→←全員揃って、約束の場所へ



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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年4月22日 10時

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