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絶望の淵を彷徨う ページ31

桜井side


これは、ある意味良かったのかもしれない。

夏の方向に示しがついたから。

そう思えたのは、ほんの一瞬で。

さっき出てったばかりの彼女を前にしたら、絶望の波が押し寄せて来た。

もう一人の同志も、共に呼んだ。

2人が並んで、何かを察したように真っ直ぐ立っている。

その意思の強い眼差しを、私は直視出来なかった。

仲間は味方だと、分かっているはずなのに。

そう、2人には再三言ってきたのに。

今の私は、そんな2人さえも信じることが出来ない。

大切なはずの仲間でさえ、心の底から信じられない。

私は…キャプテン失格だ。




「玲香…話ってどしたの?」


生駒「体調大丈夫?」


桜井「…ごめんっ」


「どしたの…そんな……泣かないで?

何があったか、まだ分からないけど…

泣くほどしんどいこと、あったの?」


生駒「玲香…最近様子おかしかったよね。

それ、何か関係してるの?」


桜井「私ね……わたしっ」




言わなきゃいけない。

いずれ、みんなにもバレるんだ。

それなのに、どうしても二の句が継げなかった。

自分で言うのは、大きな躊躇いがある。

壊れかけている情緒が、プツンと切れてしまいそうだった。

咄嗟に、隣にいるマネージャーさんの方を見た。

ふるふると首を振る私に、眉を下げて頷いてくれた。

私は、自分のことも自分で話せない。

自分で決めたことさえ、人に伝える勇気もない。

今の私には、何もない。

そんな自分に絶望した。




『私から言っていいの…?』


桜井「私には言えない…っ!」


『分かった…じゃあ言うね。

2人とも、落ち着いて聞いてね。

何となく気づいてると思うけど、最近玲香の調子が悪くてね。

体も心も、ちょっと限界超えちゃってるんだ。

だから、しばらく活動をお休みすることになった。

全国ツアーも、今年は玲香は出演しない』




2人同時に息を呑む音がした。

気を遣って、顔に驚きを出さないようにしてくれてるだけ。

頭の中はきっと、大混乱だろう。

当たり前だ。

全国ツアーを目前に控えて、全公演欠席って言われたんだから。

キャプテンの活動休止なんて、前代未聞。

まして、夏のツアーに同行しないなんてありえない話だ。

なんて言われるか…

そう考えただけで、不安と恐怖と罪悪感で、涙が溢れてくる。

私は肝心な時に、グループの力になれない。

あれだけ人に、支えると言っておきながら。

ポンコツなんかじゃ済まされない、最低最悪のキャプテンだと思う。

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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年4月22日 10時

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