貴方だけが救いだった ページ9
「ん…」
エタノールの匂いがする。あとシュークリーム。
「起きたか」
「…ん"ー」
目を擦ろうとしたら止められた。
「ぅ」
「あまり擦るな。これで冷やせ」
保冷剤を包んだらしいタオルを貰い、目に当てる。
「水はいるか」
「い"る」
ご丁寧にストローまである水を飲む。氷入ってて冷たい。美味しい。
「お腹…」
「シュークリーム食うか」
「食うー…」
「口を開けろ」
「あー…」
一口サイズにしてくれたのだろう。フォークに刺さったシュークリームを食べさせてもらう。
「おいじぃ…」
「そうか」
「おっ‼︎¿?‼︎⭐︎⁇%」
ランス君⁉︎⁉︎あっ急に意識が覚醒…あれここ救護室⁉︎⁉︎
「ん"ん‼︎これは失礼したね、もう大丈夫さ。友人達の所に戻るといい」
「A」
「消した理由を、教えてくれ」
主語がない。それでも僕が消したものなんて、何の事を指すかなんて明白だった。
「…フォア、「させるか」
杖を持った左手を止められ、口を彼の掌で塞がれる。
目の前の彼と目が合うのが恥ずかしくて目を逸らした。机の上には先程食べさせてくれたシュークリームが置かれている。
「モゴ、モゴモゴモゴ(離してもらって構わないよ)」
そう言うと彼は大人しく手を離した。
「話したくないなら話さなくていい。時が来るまで待ってやる」
「そしたら一生話さないかもよ?」
「だとしても待つ」
僕から杖を取ってランス君は棚の上に置こうとした。ごめん、でもね、
「おい…!」
杖が一つしかないとでも思った?
「フォアメモリー」
.
子供の頃は薬が作れるとかで、よくチヤホヤされたものだ。薬剤師だった両親は僕の所為で働く気力がなくなり仕事を辞めた。そんな両親は料理に毒を混ぜて死んだ。僕だけ生き残った。
煙たがる親戚をたらい回しにされて、僕は施設に保護される事になった。
こんな口調と環境だから学校でイジメられるのは当然だった。
「A菌に触られたら罰ゲームな」
特に何とも思わなかった。だってずっと当たり前の事だったから。
転機が訪れたのは中学の頃だ。
「お前ら…よっぽど暇なんだな」
神様の様な人だと、思った。
__
私は数ヶ月の間、全く人間界から姿を隠して、本当に、悪魔の様な生活を続けて参りました。勿論、広い世界に誰一人、私の所業を知るものはありません。若し、何事もなければ、私は、このまま永久に、人間界に立帰ることはなかったかも知れないのでございます。
江戸川乱歩『人間椅子』
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はな(プロフ) - 透さん» ご指摘有難う御座います!私ずっとウェーだと思ってました…(にわか)。これからも引き続きお願いします! (3月31日 11時) (レス) id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 本好きさん» コメント有難うございます!結構こだわってるのでそう言って貰えてすごく嬉しいです! (3月31日 11時) (レス) id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)
透 - 細かい所なんですけど、セル・ウォーのウォーがウェーになっています。楽しく読ませてもらっています!! (3月31日 8時) (レス) @page7 id: 23dba55806 (このIDを非表示/違反報告)
本好き(プロフ) - 毎回お話の最後にある文章がこだわりを感じて好きです。これからも楽しく読ませていただきます。 (3月30日 21時) (レス) @page7 id: 860fd688d9 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 華さん» コメント有難うございます‼︎そう言って頂き光栄です。これからもそう思って頂けるよう頑張ります! (3月30日 20時) (レス) @page7 id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2024年3月28日 21時