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それだけがとても重い ページ11

「さて、君達の疑問に答えてあげよう」

ドット君が持ってきたらしいお茶を飲む。あっつ。

「僕がランス君の記憶を消しているのは」

話そうとした途端に冷や汗が止まらなくなった。

「消して、るのは」

カヒュ、と音が鳴った。手が冷たくなっていくのがわかる。

「大丈夫か⁉︎」
「済まない、大丈夫さ。何れ語らなくてはいけないことだったから」

一生隠し通すなんて、無理な話だったんだ。


「一年前、彼に2度と話しかけるなと言われたんだ」
「…え?」

「嗚呼僕と彼は中学の頃からの知り合いでね。僕がベッタリしすぎたんだ」

「嫌われてしまっても僕は彼が大切だった。だから同じ学校に入った」

「中学の物もイーストンに入った今の物も、僕に関する全ての記憶は彼から消した。そしたら、あの言葉は無効になると思った」

別に消すのは中学の記憶だけで良かったんだ。でも彼の記憶に自分という異分子が入るのは嫌だった。1を消したら後は全部同じだし消してしまおうと思った。

「安心してくれて構わない。他の人の記憶は消してない」

そもそも中学が運が良すぎたんだ。あんなにベッタリしても赦されてたんだから。

「…固有魔法で消してるんですよね?いつ消してるんですか」
「彼、夜中によく研究室に来るんだ。その時に消しているよ」

「何でランス君は研究室に行くんだろう…」
「彼の魔力量的に僕が消せなかった記憶の残り香があるんだろう。人は失ったものを本能的に探し出そうとするものだからね」

「魔力量が関係してんのか?」
「うん、フォアメモリー(僕の固有魔法)は魔力量が多い相手だと効果が短いんだ」

僕の力不足で、彼から完全には記憶を消せなかった。恐らく彼が研究室に永遠に来なくなった日こそ、完全に記憶が消えた証拠になる。



「仲直りしないの?」
「え?」
「大事でしょ」
「…優しい人に育てられたんだね」
「うん」
「仲直りはね、無理だよ」

ガーンと言う効果音がつきそうなほど固まったマッシュ君は本当に、本当にいい子だと思う。優しくて子供みたいに純粋で、確かにこの子だったらランス君も友達になるだろう。彼は世話焼きだし。

「喧嘩じゃないんだ、これは。」

拒絶なんだよ。お互いを思い遣ってやるものではない、片方が愛想を尽かして起こるものなんだ。

__
人間の、又人性の正しい姿とは何ぞや。欲するところを素直に欲し、厭な物を厭だと言う、要はただそれだけのことだ。
坂口安吾『続堕落論』

君の様な人になりたかった→←美しくなんて出来やしないさ



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はな(プロフ) - 透さん» ご指摘有難う御座います!私ずっとウェーだと思ってました…(にわか)。これからも引き続きお願いします! (3月31日 11時) (レス) id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 本好きさん» コメント有難うございます!結構こだわってるのでそう言って貰えてすごく嬉しいです! (3月31日 11時) (レス) id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)
- 細かい所なんですけど、セル・ウォーのウォーがウェーになっています。楽しく読ませてもらっています!! (3月31日 8時) (レス) @page7 id: 23dba55806 (このIDを非表示/違反報告)
本好き(プロフ) - 毎回お話の最後にある文章がこだわりを感じて好きです。これからも楽しく読ませていただきます。 (3月30日 21時) (レス) @page7 id: 860fd688d9 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 華さん» コメント有難うございます‼︎そう言って頂き光栄です。これからもそう思って頂けるよう頑張ります! (3月30日 20時) (レス) @page7 id: 2ebd6ae62e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はな | 作成日時:2024年3月28日 21時

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