【wrwrd!】オレ、天使。【男主】 (ページ26)

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涙と爪痕と : ひとらんらんside ページ26

綺麗に掃除した部屋にAくんを案内した後
更新された研究会のグループを見ながら自室での時間を過ごしていた
俺は朝課の農作業のため、夜の見廻りは免除されている
夜の時間は一人で疲れを取ることができて、好きだ

窓を開けて空を見る
今日は新月だが、月の代わりを担うように星が光ってそれほど暗くはない

バルコニーに出てぐいっと腰を捻るとパキパキと音が
ああ、老化って辛い

そう思って部屋に戻ろうとした時、また同じ音
…あれ、これ俺の腰の音じゃないよね
音を辿ると、どうやら隣の部屋から鳴っているらしい

隣の部屋？
…Aくんの部屋だ、何の音だろう、少し心配である
窓は全開、壁をつたえば行くことはできそうなので早速行動に移す

その部屋でAくんはベッドで眠っていた
見た所特に異常はなさそうだが…
するとまた同じ音、

近寄って寝顔をちらりと見ると

涙、

「……どうして…？」

！！
…びっくりした、寝言か？

「……––––、––– ––、––」

俺が理解できたのは最初の言葉だけ
残りは聞き取れなかったが、さっきの音の正体がこれだということは分かる

さらに近寄ると、拳を握りしめている彼の姿
かなり強く握っているようだ

その間も聞こえる、途切れ途切れのノイズのような音
グルッペンが言っていた、人類の言語以外の言語を話しているのかもしれない

…なぜAくんは泣いているのだろう？
俺にはわからないし、きっと眠っているAくんにもわからないだろう

俺と同じくらいの背丈のAくん、容姿も人間でいえば若い男性くらい

でも人知れず泣いて眠るその姿が子どものようで、痛々しくて、しかし愛しく感じて

思わずAくんの手を掴んで、握りしめた拳を開かせた
掌に爪が食い込んでいたようで、赤くなっている

空いているもう片方の手で涙を拭うと悲しげなその表情は少しだけ緩んだように見えた

「……thanks, love you」

今度ははっきりと、人間の言語、英語、
寝言だとはわかっていたが、胸が高鳴った

愛、

もしかしたら彼は夢の中でも愛を求めていたのかも知れない
月の出ていない寂しい夜に、ひたすらに

ひと「…見廻り、来ないでくれよ？」

近くにあった椅子を引っ張って、Aくんの眠るベッドの横に置く
そこに座って、ベットに寄りかかり
Aくんの握りしめていた方の手に自分の手を絡ませると、また少し、表情が緩んだ気がした

ひと「大丈夫、側にいるから、おやすみ、A」