グレーのパーカー ページ43
.suezawa side
「、Aー？」
『ん、あ、誠也くん、どしたん』
「こっちのセリフや、ぼーっとして」
何回か名前を呼んでたのに気付かんかったA。
いつもの威勢はなく、なんだかどこか遠くを見つめてる感じ。様子がおかしくて声をかけたけど、本人はなんともないように接してくる。
「今日この後なんかあるん」
『いや、特にないけど』
「飯行くか」
『え、、うん、』
いつもだったら、「えー！誠也くんの奢りなら！」とかってはしゃぎだすけど今日はそんな感じもない。明らかに可笑しい。
グループでの、撮影を終えて送ってもらう。
あいつらも察したのか何も言わずに帰ってく、こーいう時は察しがええんのは助かる。
適当なところで下ろしてもらって、タクシーを拾って店を探していると、
『…ね、やっぱ、ご飯いい』
「はぁ？連れてく言うてんねん」
『いや、あの、せいやくんの家でもいいならそっちが、うちでもいいけど、、』
遠慮気味にそう発するA。
彼女の言う通りに、店から自宅へと行き先を変更した。
『お邪魔します』
「ん、適当に荷物置いて」
.
「で、何があったん」
ソファに腰を下ろし、Aの横に並んで座る。
しばらくの間沈黙が続きやっと口を開き始めた。
『…特に何かあったって訳ではないんやけど、今日さ朝現場向かう途中に駅ですれ違った人に「Aぇから出てけ」って言われて、あ、いや、気がしただけかもしれないんだけど、、』
勘違いかもしれん、と最後まで自分を否定しようとするAに若干の苛立ちを覚える。それもきっと、いつもの彼女より否定的になっているからだろう。
それで、と続きを話してもらう。
.
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作者名：ぼんじり | 作成日時：2022年10月9日 17時
