第58話 ページ8
(伊)
ヒロインが学校で倒れ、病院に搬送されたシーン。シーンに合わせたメイクのせいで、女優さんの顔は青白い。
本当に具合が悪そうに、ベッドに横たわって萎縮している。
さっきの威勢はどこへやら、ヘアメイクさんと何を話したか知らないけど、そこから彼女に気力はない。
監督「よーい、はい！」
伊「おいし？」
『おいしいけど……恥ずかしい……。』
伊「恥ずかしがり屋さんだねー。」
監督「……カット！よし、本番いきましょう！」
演技なのか素なのか、彼女の元気のなさが功を奏して、本番は一発でOKが出た。
周りのスタッフさんが、カメラの配置替えなんかをしているときに、彼女が声をかけた。
『伊野尾さん、期待させないでくださいよ。』
伊「へ……？」
「伊野尾さん」という呼び方に、少なからず動揺した。
『私は、伊野尾さんがあの事を覚えてなさそうだったから、伊野尾さんのそばにいられるんじゃないかって思ったんです。』
伊「覚えてない、って何を？」
Aちゃんからも、この人からも「覚えてない」って言われる。
覚えてないって……俺は何を忘れてるの……？そんなに大事なこと、何で俺は忘れてるの……？
『いいんです。きっと伊野尾さんの記憶の中には元から無いはずだから。』
伊「記憶の中に無いって……どういうことなのか教えて。俺、その事を知りたいんだよ。」
首を横に振る彼女。目には涙が溜まっているように見えた。
『覚えてても、覚えてなくても一緒だったんです。結局あなたは、あの子に惹かれてるんです……！』
声を震わせて想いを吐露する。そんな姿を見て、彼女に「俺の覚えていないこと」を教えてと迫ることはできなくなってしまった。
『明日、最終日ですよね。もしあの子に気持ちを伝えるなら……明日が最後のチャンスですよ。』
「最後のチャンス」という言葉にはっとする。
Aちゃんはこの業界の人じゃない。明日が終われば、元の仕事へ戻ってしまう。こうやって毎日のように会うこともなくなる。
もう一度やって来た、「最後のチャンス」。
──「最後のチャンス、逃すなよ」
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ポッキー(プロフ) - 伊野尾様Love.@七星さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！！！私の想像以上に楽しんでいただけたようでw ホントに感謝です……！！ありがとうございました！！ (2020年1月6日 23時) (
レス) id: eb2c980ab8 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - すっっごくいい作品でしたぁぁああ…泣 涙腺がぶっ壊れたw二人のすれ違いに「あぁっ、違うの！うわぁあぁあ」てなってましたw実は百合花がいじめの主だったりして？とか考えてたけど全然いい人だった…ごめんなさいw次回作ぜひ見たいです！ありがとうございました！ (2020年1月6日 22時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ポッキー | 作成日時：2019年10月15日 21時
