第53話 ページ3
(A)
伊「俺と付き合ってって言ったら付き合ってくれる?」
監督「伊野尾さん、ちょっと力んでません?力抜いて。」
映画序盤の目玉、告白シーン。主人公の手を取り、二人で見つめ合った後、伊野尾くんが告白する。
私は「本当の場面」を思い出して、その時の幸せを懐かしんでいたのだが、これまで順調だった伊野尾くんが突然NGを連発しだした。
監督「10分くらい休憩しようか。」
疲れているのだろうか。休憩がかかるなり、伊野尾くんのところへ駆け寄る。
「大丈夫?」
伊「大丈夫。気持ちが乗らないんだよね。」
気持ちが乗らないだけにはどうも見えない。いつもより重たく暗い表情がそれを物語っている。
伊「Aちゃん。」
「ん?」
伊「前世とかって信じる?」
「え……。」
言葉がつまる。私が欲しい言葉に直結するような質問だった。
彼は亡くなっているのだ。この伊野尾くんが本当にあの伊野尾くんだったら、前世とか生まれ変わりとか、そういう類いの話になるのが妥当なんじゃないかと思う。
もしかして、と胸が高鳴る。
「私は……信じてるよ?」
この前みたいに伊野尾くんを混乱させるようなことは言いたくない。込み上げる思いを、「信じてるよ」に乗せる。
伊「そっか。ごめんね、変なこと聞いて。」
私の本当の思いがこんな会話の中の一言で伝わるはずはなかった。
まだ足りないんだ。
「伊野尾くん。」
伊「ん?」
「変じゃないよ。」
伊「え?」
「伊野尾くんの言いたいこと、分かる気がする。」
どうか、伝わって。私が求める答えに近づいていることを。
伊野尾くんは何も言わず、俯いたまま微笑んでその場を立ち去った。
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ポッキー(プロフ) - 伊野尾様Love.@七星さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!私の想像以上に楽しんでいただけたようでw ホントに感謝です……!!ありがとうございました!! (2020年1月6日 23時) (レス) id: eb2c980ab8 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - すっっごくいい作品でしたぁぁああ…泣 涙腺がぶっ壊れたw二人のすれ違いに「あぁっ、違うの!うわぁあぁあ」てなってましたw実は百合花がいじめの主だったりして?とか考えてたけど全然いい人だった…ごめんなさいw次回作ぜひ見たいです!ありがとうございました! (2020年1月6日 22時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポッキー | 作成日時:2019年10月15日 21時