第14話 ページ15
(山田)
本当の親を知らない俺たちにとって、お母さんは唯一信頼できる人だった。
心の支えを失った俺は、茫然自失のまま日々を過ごしていた。
それは8人も同じだったはず。
薮「山田が第一発見者だったよな」
八「山田も、探しに行ったお母さんも遅いからどうしたのかって見に行ったら、血まみれのお母さんと、倒れてる山田がいて」
有「山田は生きてるって言われたけど、なかなか目覚めないから心配になってきちゃって」
八「ショックでその場に倒れてたってだけだったんだけどね」
ぽつぽつと、俺の知らないあの時の状況が話されていく。
俺が次に見たのは、病院の天井だった。
ベッドを隙間なく人が取り囲んで、俺の顔を覗き込んでいた。
そこにいたのは一緒に住んでいる8人と刑事の2人。「良かった」って喜んでる皆を見て、初めて気絶してたんだって自覚した。
そのあとは刑事に覚えてることを全て話した。
.
いや、全てじゃない。
最後に見た男のことは言わなかった。
8人も含めて誰にも言わなかった。
伊「そのあと大変だったねー」
薮「9人分の学費、食費、その他諸々……」
中「川端さんに助けられたよね」
お母さんがいなくなってすぐは、お母さんの両親、すなわちおばあちゃんやおじいちゃんに育ててもらった。
でも、9人の子どもを育てるというのは、やはりふたりの体に負担をかけるもので。
当時、捜査のために頻繁にやって来ていた川端さんという人が、俺たちの遊び相手になってくれたり、時には夜ご飯も作ってくれたりした。
つまり、俺たちにとってはお父さん的な存在なんだ。
この家を出た18歳以降、川端さんには会っていない。彼が今どこで何をしているかは、もう分からない。
まともに「ありがとう」と言えた記憶がない分、会いたいんだけどな。
知「生活は良かったけど……ね……」
お母さんの事件は所謂完全犯罪だった。
残っていたのは俺の指紋だけだったらしく、それすらも雨で流されて、微かなものだったという。
俺はその日から復讐に燃えていた。
刑事に男が去っていくのを言わなかった理由。
それは警察に先を越されたくなかったから。
復讐は俺自身が果たしたい。その気持ちは今も変わっていない。
でも手遅れだった。
今ごろになって犯人の爪牙にかかるなんて想像もしていなかったんだ。
この場にいる、誰一人として。
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Pocky(プロフ) - 槿さん» 槿さんありがとうございます!是非最後までお付き合いくださいm(__)m (2018年2月9日 7時) (レス) id: eb2c980ab8 (このIDを非表示/違反報告)
槿(プロフ) - 面白くて続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年2月9日 0時) (レス) id: dcd6098eeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポッキー | 作成日時:2017年12月19日 18時