第7話 ページ8
翌日、昨日伊野尾さんが忘れていった楽譜を返そうと思って音楽室に来た。
音楽室に行けば彼がいるということはもう分かっていた。
扉の前に来ると音楽室の電気は点いていて、微かにピアノの音が聞こえた。
ドアの小窓から覗く。
「やっぱり……。」
弾いているのは伊野尾さんだ。美しいメロディーに思わず聞き入ってしまう。
曲が一段落したところで中へ入った。
「あのー……。」
伊「あっ、Aちゃーん！ここ座って？」
どうやらこの人の前では私のペースは通用しないようだ。
左にずれ、自分の隣にできたスペースをポンポンと叩く伊野尾さん。
「あっ、う、うん。」
ピアノの方へ向かう足は駆け足だった。一秒でも長く過ごしていたいという気持ちが私を焦らせる。
伊「これ、弾こ？」
「え…………？」
初見の曲は弾けるわけないよ……！
伊「いくよー、せーの」
最初が何の音かも分からず始まってしまった。
鍵盤の上であたふたしていると
「…………！」
彼の右手が私の左手を握った。
「え…………？」
出てきた声は掠れていた。
ドキッとして彼の方を見る。彼は優しくもはっきりとした目で私を見つめていた。
目をそらしそうになったけど、そらすことが出来なかった。
目線で捕らえられたみたいだった。
.
.
.
伊「俺と付き合ってって言ったら付き合ってくれる？」
「えっ……？！」
展開が早すぎた。
向こうからの唐突な告白が頭の中でリピートされる。
私はその言葉をすんなりと受け入れるほどの理解力を持ち合わせていない。
でも、その言葉を待っていた自分が心の中で「OKって言っちゃえ」って言ってるのが聞こえる。
伊「ダメ？」
「いや、もちろんOK……です……。」
彼に届くか届かないか、それぐらい小さな声でそう答えた。
伊「ホント？！良かったー！」
「うわあっ……？！」
握られていた左手が引き寄せられる。
唇が優しく触れた。
「…………！！」
伊「かわいいよ？」
顔がカーッと熱くなっていって恥ずかしくて手で顔を覆った。
彼はフワッと笑った。
伊「今度から敬語使ったらダメだからねー？」
「あっ…………。」
未だ握られたままの左手が目に見えないはずの幸せを見せてくれている気がした。
この後悲劇が始まることを私はまだ知らない。
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Pocky(プロフ) - はろぅきてぃーさん、そう言って頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2017年7月2日 21時) (
レス) id: eb2c980ab8 (このIDを非表示/違反報告)
はろぅきてぃー - 感動しました！これからも楽しみにしています(*^^*) (2017年7月2日 18時) (レス) id: defa2607a7 (このIDを非表示/違反報告)
Pocky(プロフ) - あっぷるやまいちごさん、ありがとうございます！そう言って頂けると本当に励みになります。あっぷるやまいちごさんもコメント沢山して頂きありがとうございました！ (2017年6月27日 18時) (レス) id: eb2c980ab8 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるやまいちご。(プロフ) - 完結、おめでとうございます！お疲れ様でした！次のお話も楽しみにしてます！ (2017年6月26日 21時) (レス) id: fc6a2498d2 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるやまいちご。(プロフ) - もちろんです！まちます！頑張ってください！ (2017年6月25日 7時) (レス) id: fc6a2498d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ポッキー | 作成日時：2017年5月30日 19時
