行く先は違えど。section.1【コードブルー】

꒰ঌ‪ episode.29 ໒꒱ ページ30

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家族が帰ってから、藍沢を呼んだ。ノックが聞こえ、部長が「どうぞ」と言うと扉が開いた。


藍沢「失礼します」

「おぉー、来たなー」

田所「西口八重さんの、ご家族の方がみえていました。家に帰すとは何事かと怒ってらっしゃいました。ですが、歯痛の訴えから冠動脈疾患は中々予測できない。事情を話したら、分かってくださいました」

藍沢「私は同席しなくて良かったんでしょうか」

「いや。今回みたいに感情的になってる時は、当事者が居る方がまずい。それがフェローとなれば尚更だ」

田所「獅子島先生の言う通りです。それに、こういう時の為に私が居るんです」


フェローだからって許される訳じゃない。患者やその家族にとっては、同じ医者。だから、せめて俺達シニアか、部長クラスが謝罪した方が大事にならずに済む。確率が高い。


田所「ただ、もう少しじっくり西口さんのお話を聞くべきでしたね。西口さんには糖尿病の既往歴があった。丁寧に問診をしていれば、分かったことかもしれない。何よりも、1人で救急に来られたその不安を、察するべきでした」

藍沢「はい」


いつもと変わらない声色で返事をした瞬間、黒田が勢いよく立ち上がって部屋を出て行った。



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