行く先は違えど。section.1【コードブルー】

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針ヶ谷すみれは、川上さんの担当医だが患者の言葉に耳を貸しすぎる節がある。そのくせ、自分の診断に自信がなく、しょっちゅうオレに聞きに来る面倒くさい後輩だ。

川上さんは腫瘍が小さくなるのを待ってる最中の患者で、痛み止めのせいで最近せん妄が出始めてるのは知っている。でも、バイタルも多少の変動はあっても、問題視する程じゃない。


「放っとけ。痛み止めは入れてるし、そんな激痛は無い筈だ」

「でも、血圧が少し下がり気味みたいで普段とは様子が違うって」

「うるせぇな。だったら、てめぇでどうにかしろや。オレはこの後もオペがあんだよ。いちいち戯言に付き合ってる暇はねぇ。そんな事より、西条捕まえとけ。こんな愚図共とやってたら、終わるものも終わらん」


そう言っても、電話を切ろうとせずこちらを伺ってる看護師。


「針ヶ谷先生が、ひと言でも良いから話したいと」

「昇圧剤入れて様子見りゃいいだろ。それでも納得いかねぇなら、てめぇでどうにかしろ。何度も言わすな愚図」


オペの事しか頭に無くて、他の事なんかどうでも良かった。何より、この面子でのオペに嫌気と怒りとでいっぱいいっぱいで。

オレは初めて、判断を誤った。


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